虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞) 家庭の医学

 近年、食生活の欧米化や人口の高齢化に伴ってわが国では虚血性心疾患がふえています。虚血性心疾患は直接死につながる恐ろしい病気です。病気をよく理解し、また食生活やライフスタイルを改善することによって予防しなければなりません。虚血性心疾患には狭心症心筋梗塞が含まれます。特に急性に発症する不安定狭心症と心筋梗塞を急性冠症候群と呼び、命にかかわる状態で救急搬送も含めてできるだけ早く循環器専門施設を受診する必要があります。症状としては胸痛が主で、心筋梗塞では強い胸痛、あご・歯の痛み、肩から腕の痛み、冷や汗を伴う場合もありますが、狭心症では漠然とした胸の圧迫感で、自覚症状としては軽いものと考えられる傾向があり注意が必要です。


■養生のポイント
 一度そのような病気にかかった人は、心筋梗塞の再発を予防し、あるいはその増悪(ぞうあく)を防がなければなりません。まずは胸の症状が再び出現した場合には必ず主治医に早く相談をすることが重要です。 そのうえで医師の診断のもと、冠動脈の血液の流れをよくする薬剤、心臓の酸素需要を減らす薬剤、あるいは血栓の形成を予防する薬剤などによる治療を受けます。
 また、基本的な治療として虚血性心疾患になりやすい要因(冠危険因子)を除去することが第一です。冠危険因子は動脈硬化の危険因子とほぼ同じで、高血圧脂質異常症喫煙糖尿病肥満慢性腎臓病(CKD)ストレスなどがあります。これら危険因子を治療したり、取り除くことがなによりも大切で、主に複数の薬による治療で厳格にコントロールされます。
 虚血性心疾患の治療には、このほかに冠血行再建術といって冠動脈バイパス手術やカテーテル・インターベンションによって血流を再開させる手技がおこなわれています。カテーテル・インターベンションとは、カテーテルという細い管を血管の中に入れて冠動脈の狭くなったところをバルーン(風船)やステント(金属の網でできた小さな筒)によってひろげる手技のことです。薬物療法を選ぶか、冠血行再建術を選ぶかは、その人のもっている病気の状態によりますので専門医の診断を受けることが必要です。

■生活上の注意
□食事
 冠危険因子を取り除くための食事の注意が必要です。つまり高血圧の予防のために減塩を、また脂質異常症予防のためにコレステロールや動物性脂肪の少ない食事、植物性脂肪の多い食事を心掛け、繊維分を多くとり、コレステロールを下げる作用があるn-3系(オメガ3系)不飽和脂肪酸を含むイワシなどの青魚を多くとるようにします。余分なエネルギーを摂取しないことも大切です。

□運動
 運動によって、心臓、肺、筋肉などの臓器や器官の機能が発達し、その結果として健康な人のみならず、心臓病患者においても運動能力が増加します。また運動で鍛えることによって、一定のそれほど強くない運動をしたときの脈拍数や血圧が低下し、心筋が要求する酸素の需要が減少し、狭心症の発作が起こりにくくなります。このほかに、肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病などの冠危険因子を是正することによって、心筋梗塞の再発や死亡を減少させることが大規模な疫学研究の結果、証明されています。
 実際にどのような運動をしたらよいかについては、その人のかかった虚血性心疾患の重症度や病気の状態によります。厳密には心臓病に関する精密検査をしてもらったうえで、どのような運動をしてもよいか運動処方を決めてもらうとよいのですが、一般的には速足歩きのような歩行を、自分で脈をはかって1分あたり120回を超えないようにしながら、1日20~30分おこなうとよいでしょう。もうすこしくわしい運動のしかたについては「運動のしかた」を参照してください。

■病気の理解
 虚血性心疾患にかかった人は、自分のからだの状態を知り、専門医の診察を受けることが重要です。特に胸痛・息切れ・動悸・手足のむくみなどの症状に注意し、主治医に報告してください。
 虚血性心疾患では、さまざまな病態があります。心臓の血管が細くなったりつまったりして、心筋虚血(心筋の需要に見合った十分な酸素を供給できない状態)がある人、心筋梗塞を起こして心臓のポンプとしての機能が低下している人、危険な不整脈が出ている人など、心臓の状態に応じて治療や養生のしかた、社会復帰や日常生活の心構えが異なります。

■定期健診
 心臓病にはさまざまな症状がみられますが、なかには無症状のうちに病気が進行している場合もあります。また、冠危険因子をもっているかを調べて、症状が出る前に危険因子を取り除くことで心臓病を予防することが大切です。そのためにも定期的に健康診断を受けておくことが必要です。

【参照】心臓の病気:虚血性心疾患

(執筆・監修:自治医科大学附属さいたま医療センター 総合医学第1講座 主任教授/循環器内科 教授 藤田 英雄)