新型コロナウイルス感染症法上の位置付けが「5類」に引き下げられ、街はコロナ前のにぎわいを取り戻しつつあるが、医療機関には後遺症に悩む患者からの相談が絶えない。8日で5類移行から1年。今も症状が長引いて社会生活に影響を及ぼすケースがあり、医師は「引き続き感染対策が必要だ」と注意を促す。
 世界保健機関(WHO)は新型コロナの後遺症を「2カ月以上続き、他の疾患では説明できない症状」と定義しているが、治療法はいまだ確立していない。
 厚生労働省の研究班が東京都品川区、大阪府八尾市、札幌市を対象に行った調査では、2020年1月~22年8月に感染した成人の約1~2割に後遺症があった。感染から2カ月以上何らかの症状が続いたと答えた人は、品川区で11.7%、八尾市で15.0%、札幌市で23.4%だった。
 新型コロナの後遺症専門外来を置く岡山大病院(岡山市)の大塚文男教授(総合内科学)は「新型コロナは他の感染症に比べ後遺症が残る人の割合が高く、持続期間が長い」と指摘。5類移行後も相談に訪れる患者は減っていないという。
 同病院を21年2月~今年3月に受診した930人を分析したところ、発症から回復までに要した期間は平均220日だった。症状は従来株、デルタ株、オミクロン株とも「倦怠(けんたい)感」の割合が最も高いが、オミクロン株に感染した人は、他の株に比べて睡眠障害が約2倍に増加。このほか頭痛や集中力の低下、せきが主な症状だった。後遺症が長引き、抑うつ状態になるケースもあるという。
 社会生活に与える影響も大きく、21年2月~23年12月に受診した就労者545人を調べると、約40%が休職、約10%が退職を余儀なくされた。
 大塚教授は「ウイルスはまだ変異を続けながら存在していることに留意し、感染対策を続けるべきだ」としている。 (C)時事通信社