中国・Fudan UniversityのLin Zhao氏らは、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドの肥満症治療薬としての有効性と安全性を検証する第Ⅲ相二重盲検ランダム化試験SURMOUNT-CNの結果をJAMA(2024年5月31日オンライン版)に報告。「チルゼパチド10mg/15mgの週1回投与は、肥満または過体重の非糖尿病の中国人成人においても臨床的に意味のある体重減少をもたらし、安全性プロファイルも許容範囲であった」と述べている。

中国でチルゼパチドは肥満症治療薬としては未承認

 チルゼパチドは日本および米国において、第Ⅲ相臨床試験SURMOUNT-1やSURMOUNT-2の結果に基づき、肥満症治療薬として既に承認されている。中国では2型糖尿病治療薬としては承認されているが、長期にわたる体重管理(chronic weight management)を目的とする使用についてはまだ審査中である。しかし中国では2030年までに肥満/過体重の有病率が70.5%に達すると予想されており、肥満関連の合併症や併存疾患は深刻な公衆衛生上の課題となりつつある。

 SURMOUNT-CNは2021年9月~22年12月に中国の29施設で行われた多施設共同試験。対象は肥満(BMI 28以上)あるいは過体重(同24以上)で肥満に関連する疾患(高血圧、脂質異常症、心血管疾患など)を1つ以上(糖尿病は除く)有する成人(18歳以上)。これは世界保健機関(WHO)の診断基準(肥満:BMI 30以上、過体重 25以上)よりも低い。

 対象をチルゼパチド10mg群、15mg群、プラセボ群(いずれも週1回、自己注射で投与)に1:1:1でランダムに割り付け52週間追跡(加えて、生活習慣に対する介入指導は3群全てで実施した)。主要評価項目は52週時点の体重減少率(%)および52週時点で5%以上の体重減少を達成した患者の割合とし、安全性についてはintention-to-treat解析を行った。

既報の臨床試験と一致する結果

 2週間のスクリーニング期間ののち210例が登録された(チルゼパチド10mg群70例、20mg群71例、プラセボ群69例)。女性は103例(49.0%)で、全体の平均年齢は36.1±9.1歳、平均体重は91.8±16.0kg、平均BMIは32.3±3.8だった。

 201例(95.7%)が試験を完遂。52週時点のベースラインからの体重変化率(最小二乗平均)は10mg群が-13.6%(95%CI -15.8~-11.4%)、15mg群が-17.5%(同-19.7~-15.3%)、プラセボ群が-2.3%(同-4.4~-0.3%)だった。10mg群とプラセボ群の群間差は-11.3%ポイント(95%CI -14.3~-8.3%ポイント、P<0.001)、15mg群とプラセボ群の群間差は-15.1%ポイント(同-18.2~-12.1%ポイント、P<0.001)だった。

 5%以上の体重減少を達成した患者は10mg群が61例(87.7%)、15mg群で61例(85.8%)、プラセボ群20例(29.3%)で、10mg群 vs. プラセボ群、15mg群 vs. プラセボ群、それぞれで有意差が認められた(いずれもP<0.001)。

 10%以上の患者に発生した有害事象は、下痢〔10mg群の28例(40.0%)、15mg群の29例(40.8%)、プラセボ群の6例(8.7%)〕、悪心〔同21例(30.0%)、23例(32.4%)、4例(5.8%)〕、食欲低下〔同19例(27.1%)、20例(28.2%)、8例(11.6%)〕など消化器症状が中心であったが、全体の安全性プロファイルはSURMOUNT試験やSURPASS試験で報告されたものと一致するものであった。

 考察でZhao氏らは「中国人集団を対象に適切にデザインされた肥満症治療薬に関する臨床試験はこれまでほとんどなかった」と述べ、今回の試験の強みの1つとして挙げている。結果については「主に白人を対象に実施されたSURMOUNT試験と一致するものであった」と述べている。

木本 治