虎の門病院(東京都)の吉村祐輔氏らは、慢性腎臓病(CKD)を合併している関節リウマチ(RA)患者に対する一次治療としての生物学的製剤(bDMARD)の有効性と安全性を治療継続率で評価する後ろ向き研究を実施。「bDMARDはCKDを合併したRA患者に対しても有効かつ安全であることが確認され、血液透析(HD)患者でも同様の結果が得られた。推算糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m2未満の患者ではIL-6阻害薬の継続率が特に高かった」とAnn Rheum Dis(2024年7月4日オンライン版)に報告している。

RA患者はCKD有病率高い

 RA患者は一般住民と比べてCKD有病率が特に高い。これは、RAに関連したAAアミロイドーシスやNSAID使用による腎障害、動脈硬化貧血を促進するRA特有の慢性炎症など複合的な要因によるが、CKDを合併したRA患者の管理にはさまざまな課題が伴う。CKDがあるとアンカードラッグであるメトトレキサート(MTX)は使いにくいが、その一方で適切なRA管理ができなければ腎機能の悪化を来す。NSAIDの使用にも腎障害の観点から特別な注意が必要だ。

 このような背景からCKD合併RA患者にはbDMARDを基本薬とすることが期待されるが、CKD合併RA患者、特にHDを受けている患者に対するbDMARDの有効性と安全性については、少数の症例シリーズの報告があるだけで、一定数以上の患者に対して使用した複数のbDMARDの長期追跡研究はまだない。

薬剤継続率は有効性と安全性の代替指標

 今回吉村氏らは、2004年1月~21年12月に虎の門病院および梶ヶ谷分院(川崎市)で一次治療としてbDMARDを処方した425例のデータを後ろ向きに解析した。bDMARDは、TNFα阻害薬、IL-6阻害薬、CTLA4-Ig(アバタセプ)に分類し、36カ月継続率を主要評価項目とした

 観察研究では薬剤継続率が有効性と安全性の代替指標と見なされることが一般的だ。bDMARDにおいても有効性の欠如/喪失と有害事象が治療中断の理由として挙げられることが多い。

 データの追跡は最初にbDMARDを処方された日から、①最初のbDMARDの中止、②死亡、③打ち切り(追跡不能または2021年12月末の観察期間の打ち切り)― のいずれかが発生した最も早い日まで行った。

eGFR<30群ではTNF阻害薬の継続率低い

 全体のベースラインの平均年齢は63.7±13.1歳で男性が23.8%。CKDステージはG1が 165例、G2が140例、G3aが36例、G3bが14例、G4が27例、G5が43例だった。

 eGFR別〔≧60群(305例)、30~60群(50例)、<30群(70例、うち40例はHD群、30例は非HD群) 〕に見た全体のbDMARD 36カ月継続率は、それぞれ45.2%、32.0%、34.0%だった。bDMARDの種類別に見た各eGFR群の36カ月継続率は、TNFα阻害薬が45.3%、28.2%、34.0%、IL-6阻害薬が47.4%、66.7%、71.4%、CTLA4-Igが50.0%、32.0%、33.3%だった。

 eGFRが低い群でもbDMARDの継続率は全体的に維持されていたが、TNFα阻害薬治療を行ったeGFR<30群の36カ月継続率は有意に低かった〔eGFR≧60群を基準とした調整後の中止ハザード比(HR)は1.30、95%CI 1.04~1.63、P=0.02〕。一方、IL-6阻害薬はeGFR<30群において36カ月継続率が最も高かった(同 0.11、0.02~0.85、P=0.03)。また、eGFR<30群のHD群と非HD群の比較では、継続率に差はなかった(同1.03、0.50~2.11、P=0.93)。

継続率はCKDが進行しても大きく下がらない

 以上の結果を踏まえて吉村氏らは「CKD合併RA患者に対する一次治療でのbDMARDの有効性と安全性が示された。特にIL-6阻害薬はeGFR<30の患者において高い継続率が観察された」と結論。

 さらに①一次bDMARDの薬剤継続率はCKDが進行しても著明に低下しない、②eGFR<30群ではTNFα阻害薬の継続率は下がる可能性があり、IL-6阻害薬の継続率は他のbDMARDよりも高かったーことが今回の研究から得られた重要な2つの洞察だと述べている。

木本 治