米・University of CaliforniaのConstance H. Fung氏らは、中高年の成人188例を対象に、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の服用中止を目標として、用量を伏せて(盲検下で)漸減するとともに不眠症に対する認知行動療法(CBTI)にプラセボ効果を導く内容を追加(強化型)する治療法について、第Ⅱ相ランダム化比較試験(RCT)で検討。その結果、標準CBTIを用いて管理下(非盲検下)で用量を漸減する方法と比べ、服用中止率が有意に高かったJAMA Intern Med2024年10月7日オンライン版)に発表した。(関連記事「精神疾患9種でプラセボ効果を比較」)

治療終了後6カ月時点で73%が中止

 対象は、不眠症状に対しジアゼパム当量8mg未満のベンゾジアゼピン系薬を週2夜以上の頻度で3カ月以上服用している55歳以上の成人188例(平均年齢69.2歳、男性65.4%、中等度~重度不眠症48.4%)。対象を盲検下漸減+強化型CBTI群(92例)と非盲検下漸減+標準CBTI群(96例)に1:1でランダムに割り付け、9週間の治療(CBTI 8セッション)を実施した。

 盲検下漸減+強化型CBTI群では、患者にベースラインで服用中の薬剤をカプセル剤で提供すると説明し、用量をマスキングして(盲検下で)カプセル剤に含まれるベンゾジアゼピン系薬を漸減した。CBTIには、睡眠薬に対する認識・期待を変化させ服用中止に導く内容(有害事象の強調、臨床試験で示されている効果が限定的であることやプラセボ効果の説明、漸減時の症状への対処法など)を追加した。最終治療時に睡眠薬の用量漸減を患者に開示し、睡眠薬の大幅な減量または中止にもかかわらず症状が改善していることを強調した。

 非盲検下漸減+標準CBTI群では、患者に用量漸減の計画表と錠剤カッターを提供した。

 主要評価項目は、自己記入式の服薬日誌により評価した治療終了後6カ月時点でのベンゾジアゼピン系薬の服用中止とした。解析の結果、主要評価項目の達成率は非盲検下漸減+標準CBTI群の58.6%に対し盲検下漸減+強化型CBTI群で73.4%と有意に高かった〔オッズ比(OR)1.95、95%CI 1.03~3.70、P=0.04〕。

服用頻度、不眠重症度も低下

 治療終了後1週時点での中止率も、盲検下漸減+強化型CBTI群で有意に高かった(67.4% vs. 88.4%、OR 3.68、95%CI 1.67~8.12、P=0.001)


 また、盲検下漸減+強化型CBTI群では非盲検下漸減+標準CBTI群と比べ、1週時点でのベンゾジアゼピン系薬の服用頻度(夜/週)のベースラインからの低下幅が有意に大きかった(群間差-1.31夜、95%CI -2.05~-0.57夜、P<0.001)。6カ月時点では有意差が消失した(同-0.77夜、-1.65~0.10夜、P=0.08)。

 不眠の重症度を示すInsomnia Severity Indexスコアのベースラインからの変化量は、1週時点(群間差1.38点、95%CI -0.52~3.29点、P=0.16)、6カ月時点(同0.16点、-1.89~2.20点、P=0.88)のいずれにおいても両群で有意差がなかった。ただし、両群とも臨床的に意味のある改善とされる6点を超える大幅な改善が認められた。

 以上を踏まえ、Fung氏らは「プラセボ効果を狙ってCBTIの内容を強化するとともにベンゾジアゼピン系薬を盲検下で漸減するプログラムは、標準CBTIを用いて非盲検下で用量を漸減する方法と比べ、長期的な服用中止率が高いことが示された」と結論。「本法は強いプラセボ効果を示す他の薬剤(鎮痛薬など)の漸減・中止にも応用できる可能性があり、用量漸増時の制限となりうるノセボ効果(スタチン系薬など)に対応できる可能性もある」と付言している。


(医学翻訳者/執筆者・太田敦子)