心臓の組織が硬くなる「線維化」を起こし、拡張しにくくなって血液のポンプ機能が低下するタイプの心不全について、慶応大と筑波大の研究チームは14日、モデルマウスの遺伝子治療実験に成功したと発表した。論文は米医学誌サーキュレーション電子版に掲載された。
 心臓には収縮を担う心筋細胞のほかに「線維芽細胞」があり、高血圧糖尿病、加齢などによって線維化を引き起こす。研究チームはモデルマウスのほか、心不全患者の線維芽細胞に「Gata4」と呼ばれる遺伝子を導入する実験を行い、改善効果を確認した。
 慶大医学部の家田真樹教授は、心筋梗塞などで心筋細胞が壊死(えし)し、収縮能力が低下するタイプの心不全には治療薬があるが、線維化で拡張能力が低下するタイプにはないと説明。「拡張機能不全の患者が増えて非常に大きな問題になっている。一つの遺伝子導入で効果があれば応用しやすい」と話した。
 家田教授は助教だった2010年に、心臓線維芽細胞に3種類の遺伝子を導入して心筋細胞に転換する方法を開発。「Gata4」はこれらの一つで、この遺伝子だけ導入した場合は心筋細胞に変わることはないが、線維化を引き起こさなくなることが分かった。特殊なウイルスを使い、心臓線維芽細胞だけに遺伝子を導入する技術の向上などに取り組み、実用化を目指すという。 (C)時事通信社