中国・Sun Yat-sen UniversityのZiwei Zeng氏らは、直腸がん患者1,115例を対象に全直腸間膜切除術(TME)後の3年無病生存率(DFS)を第Ⅲ相多施設ランダム化非劣性試験で検討した結果、通常の腹腔鏡下TME(LaTME)に対する経肛門的TME(TaTME)の非劣性が示されたJAMA2025年1月23日オンライン版)に発表した。

3年DFS:LaTME群79.4% vs. TaTME群82.1%

 同試験では、中国の16施設でステージⅠ~Ⅲ直腸がんと診断された18~75歳の患者1,115例を登録。通常の腹腔鏡下手技を行うLaTME群(557例)と腹腔鏡下手技に加えて肛門にも内視鏡を挿入するTaTME群(558例)に1:1でランダムに割り付けた。このうち、同意撤回例、遠隔転移例などを除外したLaTME群545例(年齢中央値60歳、男性61.1%、BMI中央値22.8)とTaTME群544例(同58歳、66.0%、22.9)を解析に組み入れた。

 その結果、主要評価項目とした3年DFSはLaTME群の79.4%(97.5%CI 75.6~83.4%)に対しTaTME群では82.1%(同78.4~85.8%)だった。群間差は2.7%ポイント(同-3.0~8.1%ポイント)、ハザード比(HR)は0.86(同0.63~1.18)で、群間差の両側97.5%CI下限値が事前に設定した非劣性マージンの-10%ポイントを上回り、LaTME群に対するTaTME群の非劣性が示された。

局所再発率と全生存率は同等、男性と肥満者では上昇傾向

 副次評価項目の解析では、3年局所再発率はLaTME群の4.4%(95%CI 2.6~6.1%)に対しTaTME群では3.6%(同2.0~5.1%)でHRは0.81(同0.44~1.49)、3年全生存率(OS)はLaTME群の90.7%(同88.3~93.2%)に対しTaTME群では92.6%(同90.4~94.8%)でHRは0.78(同0.52~1.19)と、いずれも両群で差はなかった。

 サブグループ解析では、TaTME群による3年DFSおよび3年OSの上昇傾向が、一般に術野である骨盤腔が比較的狭いとされる男性患者(3年DFSのHR 0.75、95%CI 0.54~1.05、3年OSのHR 0.64、95%CI 0.38~1.06)およびBMI 25超の肥満患者(同0.74、0.42~1.31、0.72、0.49~1.64)で認められた。

 以上の結果から、Zeng氏らは「ステージⅠ~Ⅲ直腸がん患者において、3年DFSに基づくTaTMEの安全性と有効性はLaTMEに匹敵する」と結論した。近年ではロボット支援手術が普及してきているが、同氏らは「今回の結果は、ロボット支援手術が行えない環境下でのステージⅠ~Ⅲ直腸がん患者に対するTaTMEの使用を支持するものだ」と付言している。

医学翻訳者/執筆者・太田敦子