治療・予防

脚の血流が障害される閉塞性動脈硬化症
遺伝子治療薬が登場

 脚の動脈硬化が進み、血管が詰まって血流が悪くなる「閉塞性動脈硬化症(ASO)」。重症になると脚の切断に至るケースもあるほか、心臓や脳でも動脈硬化を起こして脳梗塞や心筋梗塞を発症する危険性が高くなる。ASOに対し、2019年9月に国内初の遺伝子治療薬が保険適用となった。山王メディカルセンター(東京都港区)血管病センターの宮田哲郎センター長にこの薬の特徴や期待を聞いた。

閉塞性動脈硬化症に対する遺伝子治療

 ▽典型症状は間欠性跛行

 ASOの典型的な症状は、歩行中にふくらはぎ、尻にしびれや痛みが生じ、少し休むとまた歩けるようになる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」である。一定の距離を歩くと表れる歩行障害だ。進行すると安静時にも症状が表れたり、足の甲や指に潰瘍や壊死(えし)が生じたりして下肢切断のリスクが高くなる。

 宮田センター長は「主に脚に症状が出現しますが、たかが脚の病気と侮ってはいけません。全身の動脈硬化が進み、患者の28%が心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患、22%が脳卒中などの脳血管障害を合併しています」と説明する。

 手足の血圧を同時に測るABI検査で、血管が詰まっているかどうかを確認できる。症状が軽い場合は、抗血小板薬や血管拡張薬などの薬物療法と運動療法が有効だ。それで効果がなければ、血行を改善する血行再建術を行う。

 その一つがカテーテル治療だ。血管内にカテーテルという細い管を通して、バルーン(風船)やステント(網目状の筒)で狭くなった血管を広げる。体への負担は少ないが、血管の詰まり方によっては効果が期待できない人もいる。そうした人には「体の別の部分から切り取った血管または人工血管をつないで血流を回復させるバイパス手術を行います」と宮田センター長。

 ▽血管形成促す効果

 ところが、全身の状態が悪く、血行再建術ができない重症患者では治療が難しい。こうした患者に対して、遺伝子治療薬「コラテジェン」(一般名ベペルミノゲン・ペルプラスミド)が使えるようになった。

 ヒト肝細胞増殖因子(HGF)というタンパク質をつくる遺伝子が主成分で、下肢の筋肉に注射すると閉塞した血管の周囲に新しい血管の形成を促す。臨床試験では、潰瘍を改善する効果が認められた。宮田センター長は「手術ができない重症患者に対する有効な治療法として期待されています」と話す。

 この薬は5年間の条件・期限付きで承認され、保険適用となった。期間中に200人のデータを集め、有効性が証明されれば本承認を取得できる予定だ。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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