血流の滞りから塊が発生
心房細動による脳卒中(上)
日本人の死因として長くトップ3の一角を占めていた脳卒中を含む「脳血管疾患」は、治療法などの進歩で2011年以降は4位となっている。しかし、脳梗塞や脳出血などは重い後遺症を残すため、患者が要介護になる原因では21.7%と1位になっている。京都医療センター(京都市)循環器内科の赤尾昌治診療部長に、心房細動で起こる脳卒中について話を聞いた。
◇加齢で増加の心房細動
心房細動は、心臓のリズムが乱れる不整脈の一種で、脳梗塞の原因としても重要である。正常な心臓は、心房と心室が交互に1分間で60~100回規則正しく動くが、心房細動になると心房が細かく震えるように動き、心室のリズムも不規則になる。そのため、動悸(どうき)や胸痛、息切れ、疲れやすいなどの症状が表れるが、こうした症状が出なかったり、出ても病気と気付かなかったりするケースが少なくないという。
高血圧や糖尿病、喫煙、飲酒、ストレスなどが心房細動の原因となり、年齢とともに発症率が上がる。70代以上の5~10%が心房細動を持っていると推定され、日本国内には100万人を超える患者がいると考えられている。
◇約半数に重い後遺症
「心房細動があると、心房の中で血流が滞り、血栓という血の塊ができやすくなります。それが血流に乗って脳の血管に詰まると脳梗塞を起こすのです」と赤尾診療部長。心房でできる血栓は大きく、脳動脈の根元近くの太い場所に詰まってしまうことが多いため、脳へのダメージは急激で広範囲に及ぶのだという。
赤尾診療部長は「ひとたび脳梗塞を発症すると、約半数は寝たきりや車椅子を必要とするほど重い後遺症が残ります。脳梗塞の約30%が心房細動によるものだということが分かってきたので、対策が急がれます」と、予防の重要性を指摘している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2017/03/22 14:51)