尿糖〔にょうとう〕 家庭の医学

■糖尿病の一次スクリーニングに有効
 血液中のぶどう糖(血糖)は腎臓を通過するとき、一部は糸球体で濾過(ろか)されて尿中に入りますが、途中の尿細管で再吸収されるため、通常では尿中には出てきません。しかし、血糖値が高くなると(160~180mg/dL以上)、糸球体で濾過されるぶどう糖量が多くなり、尿細管での再吸収能を上回るようになるため尿糖が検出されるようになります。
 すなわち、糖尿病であっても、血糖のコントロールがよくなったり、軽い場合には尿糖は陽性とはなりません。尿糖の検査だけで糖尿病の存在を否定することはできないのです。逆に、尿糖が陽性であっても糖尿病以外の他の疾患によることもあります。また、糖尿病治療薬には尿中に糖を排泄(はいせつ)させる薬(SGLT2阻害薬)がありますので、このような薬をのんでいる場合は尿糖が強陽性になります。
 また、ステロイド治療の副作用で尿糖が陽性となることがあります。


●尿糖陽性となる疾患
糖尿病
内分泌疾患
 甲状腺機能亢進症、先端肥大症、クッシング症候群
ステロイド治療の副作用
肝疾患
 肝炎、肝硬変
膵疾患
 急性膵炎、慢性膵炎、膵がん
腎性糖尿病
食餌性糖尿
 胃切除後


■基準値:陰性(-)

■検査結果から疑われる病気
 陽性の場合には、次のことが考えられます。
 糖尿病、内分泌性疾患(甲状腺機能亢進症先端巨大症、クッシング症候群(副腎コルチゾール産生腫瘍参照)、膵疾患(急性膵炎慢性膵炎膵がん)、肝疾患(肝炎肝硬変)、胃切除後、腎性糖尿など

(執筆・監修:国際医療福祉大学大学院 臨床医学 教授〔臨床検査医学〕 下澤 達雄)