治療・予防

免疫療法で長期生存に期待
広がる食道がんの薬物治療(慶応大学病院消化器内科 浜本康夫准教授)

 飲酒や喫煙が関係し、年配の男性に多く発生する食道がん。かつては薬物治療の選択肢は限られていたが、2020年2月にがん免疫療法薬が使用できるようになった。手術ができないほど進行した食道がん患者に対して延命効果が期待されている。慶応大学病院(東京都新宿区)消化器内科の浜本康夫准教授に聞いた。

食道がんの特徴

食道がんの特徴

 ▽限られていた治療薬

 国内の食道がんの年間罹患(りかん)者は約2万5000人。アルコールの多飲と喫煙が主な要因で、患者数は男性が女性の約5倍である。65~74歳に多い。初期には自覚症状は乏しいが、進行すると胸の違和感、飲食物のつかえ、体重減少などが表れる。5年生存率が約40%で、経過が不良ながんの一つだ。

 がんが食道粘膜やその下の層(粘膜下層)にとどまっていれば内視鏡を用いてがんを切除できるが、深さや広がりによっては手術が必要となる。

 手術ができないほどに深く広がっている、または肺など他の臓器に転移した進行・再発食道がんでは抗がん剤が治療の基本になるが、「現実には薬物治療の方法は2種類しかありませんでした」と浜本准教授。

 ▽既存薬よりも延命効果

 そうした中、がん免疫療法薬ニボルマブ(商品名オプジーボ)が今年2月から食道がんに使用できるようになった。がん細胞は人体の免疫機構にブレーキをかけ、その監視を逃れて増殖しているが、免疫療法はそのブレーキを解除し、免疫機構を再び活性化してがんを攻撃させる。

 最初の薬物治療が効かなくなった進行・再発食道がん患者約400人を対象とした臨床試験では、ニボルマブを投与したグループの生存期間中央値は11カ月で、既存の抗がん剤を投与したグループ(8.5カ月)よりも長かった。

 一方、ニボルマブを投与すると免疫が過剰に活性化することにより副作用が表れる可能性がある。間質性肺炎脳炎、ホルモンを分泌する副腎や脳の下垂体の障害、1型糖尿病、大腸炎などだ。「副作用は、薬が効いていることの表れと考えられます。対策も分かってきたので、患者さんがつらくないように、他の医療従事者とチームで副作用の軽減に向けて取り組んでいます」と浜本准教授は説明する。

 免疫療法の課題の一つは、効果が得られる人が約2割と限られていることだ。そのため、有効性を治療開始前に予測する指標を見いだそうと研究が進んでいる。他の薬剤と併用する臨床試験も行われている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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