足の悩み、一挙解決
200人に1人がリウマチの時代 その足の痛み、ひょっとしたら!?(足のクリニック表参道 矢野紘一郎医師) 【PART2】第6回

リウマチ足の症例。左は外反母趾で第3趾が脱臼している。右が開張足で真ん中と小趾側に胼胝(タコ)ができているが、ここに激しい痛みが生じる(足のクリニック表参道提供)
◇見つかりにくい足の病変
足の関節が変形すると、痛いだけでなく、普通の靴が履けなくなったり、歩きにくくなったりして、日常生活に大きな支障をきたします。多くの人は「外反母趾(ぼし)が始まったのか?」と考えるようですが、中には気づかないうちにリウマチを発症していることも少なくありません。
一方、リウマチ診療の場においては、足を診る場合、靴を脱いで靴下やストッキングも脱いではだしになる必要があります。限られた診察時間では、なかなかそこまで手が回らず、手の診察はするけれども足は診ないということが起こりがちです。靴下の中で足の変形が進んでいても、タコができて本人がよほどつらくならない限り、足の病変に気づくことができないのです。こうした状況があるせいか、大学病院や足のクリニックでリウマチによる足病変のある患者さんを診察すると、「ずっと悩んでいました。足を診ていただけて、うれしい」などとよく言われます。
さらに、リウマチの活動性を判定する基準(DAS28)には、血液検査や自覚症状、痛みや腫れのある関節が28カ所中いくつあるかなどの項目が含まれますが、この中に足の関節が一切含まれていないことも、リウマチの足病変を見逃す原因の一つになっているかもしれません。
2016年に東京女子医大で関節リウマチの治療を受けている患者さん約6000人を対象にアンケートを行った結果、患者さんの訴えで、関節リウマチの症状が足から始まったと答えた人は全体の43%にも上りました。
もし、自分で気になる足の症状があった場合、「これはリウマチと関係ないでしょうか」と積極的に質問してみることをおすすめします。
◇チームで治療
足のクリニックでリウマチが強く疑われる患者さんが見つかった場合、リウマチの専門医に紹介しますが、そこでは薬物療法、手術療法、リハビリテーション、フットケア、セルフケア指導といった、診療科や職種の枠をこえたチーム医療が行われます。
薬物療法には、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、副腎皮質ステロイド薬、抗リウマチ薬(DMARD)、生物学的製剤(分子標的薬)があります。かつては、炎症や痛みを抑えることしかできませんでしたが、生物学的製剤の使用が開始された2003年以降は、病気の進行や関節破壊を抑制することが可能になってきました。
足のタコがつらい場合は、専門的に削るなどのフットケア(リウマチ足ケア外来)を行いますが、すでに関節破壊が進んで変形が強い場合には、手術で形を整えます。手術に抵抗をもつ方も多いのですが、実際に手術を受けた患者さんからは、「スムーズに歩けるようになっただけで、気持ちが前向きになった」「普通の靴が履けるようになって、おしゃれも楽しめるようになった」などと大変喜ばれます。
次回はリウマチ足の最新の手術方法についてお伝えします。(文・構成 ジャーナリスト・中山あゆみ)

矢野紘一郎医師
矢野 紘一郎(やの こういちろう)氏
2004年富山医科薬科大学卒業、足のクリニック医師(木曜日午前、土曜隔週午前・午後)、東京女子医科大学整形外科講師、リウマチ学会指導医・専門医、整形外科学会指導医・専門医。著書に『リウマチ足の診かた、考え方』中外医学社などがある。
全国から患者が殺到するクリニック

「足のクリニック表参道」院長。2004年埼玉医科大学医学部卒業。同大学病院形成外科で外来医長、フットケアの担当医として勤務。13年東京・表参道に日本では数少ない足専門クリニックを開業。専門医、専門メディカルスタッフによるチームで、足の総合的な治療とケアを行う。
日本下肢救済・足病学会評議員。著書に「元気足の作り方 ― 美と健康のためのセルフケア」(NHK出版)、「外反母趾もラクになる!『足アーチ』のつくり方」(セブン&アイ出版)など。
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(2020/12/09 05:00)
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