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1時間でコロナ判定
持ち運び式機器を配備へ─神奈川県 医療機関で検査可能

 神奈川県は7月、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、アタッシェケース型の感染判定機器「Life Case(ライフケース)」を開発した。医療機関内において、1時間程度で感染の有無を判定できるのが特徴。採取した検体を検査機関に運ぶ手間などが省けることから、保健所の負担軽減も期待されている。まず100台を県内で生産し、順次配備を始める予定だ。

 県が感染拡大による医療崩壊を防止するために策定した「神奈川モデル」の取り組みは、医療機器分野にまで広がりつつある。黒岩祐治知事は「医療体制を飛躍的に向上させられる」と早期配備に意欲を示している。

研修での作業の様子

 ◇前処理の必要なし

 PCR検査は、採取した検体を検査機関に持ち込むなどの手間がかかり、結果が判明するまで1日程度かかっていた。検体からウイルスの遺伝物質を抽出する際に遠心分離法を採用する従来の方法と違って、新機器は「吸引」方法を採用しており、手間のかかる前処理は必要ない。このため検査時間が大幅に短縮され、1時間程度で判定できるようになった。ウイルスの変異に強い試薬を使うなど、不測の事態にも備えていて、判定の精度もPCR検査と変わらないという。

 同機器は、アタッシェケースタイプで持ち運ぶことができる。医療機関の内外でクラスター(感染者集団)が発生した際、現場で感染の有無を確認することにより市中感染の拡大防止に役立つという。また患者にとっても、その場で感染の有無が分かるので心的負担が軽減される。

 医療機関での判定が可能になることは、新型コロナの診断が、インフルエンザの診断と同じレベルに下がることを意味する。県は医療機関に新機器を行き渡らせることで、保健所主体から医療機関中心へと検査体制の移行を目指すという。

 ◇理研と連携し開発

 新機器は、県と連携した理化学研究所の医療機器ベンチャー企業であるダナフォーム(横浜市)が開発。専用の持ち運びケースに2台収納されており、「1時間で最大24検体の感染判定が可能」(黒岩知事)だ。100台を5時間稼働させると1日当たり最大1万2000件の処理能力があり、「従来の約10倍」(同知事)となる。

 阿南英明医療危機対策統括官は、わずか1時間で感染を判定する同機器を導入することについて「自分の施設で白黒をつけられる。機器の進歩で(判定に)高度なテクニックがいらないのは、医療機関にとって最大のメリット」と力説し、「医療の正常化になる」と話す。

 これまで県は、迅速な検査を求めて医療機関にPCR検査機器の導入を要請してきた。しかし、費用が高額だったり、海外に生産を依存するため入手が困難だったりと、導入のハードルは高かった。阿南統括官は、新機器の登場により検査機会が広がることについて「第2波や秋以降のインフルエンザ流行の大きな武器になるだろう」と期待する。

 ◇実習形式で技術習得、他県にも開放

 県は7月から、医療機関の関係者向けに新機器の研修を始めた。7月末に開かれた研修は横浜市内の会議室で2時間かけて実施。同機器を購入した医療機関の臨床衛生検査技師20人が2組に分かれて参加した。
 研修では、県立産業技術総合研究所の職員とダナフォームの社員が講師を務め、新機器の特徴について一通り説明した後、受講者に組み立てや抽出作業の実演動画を見せながら、操作方法を説明した。その後、受講者は白衣を着て2人一組になり、実際に操作を体験。各組に講師1人が付き、試薬を入れたチューブを機器にセットするなど一連の吸引・抽出作業を行った。

 受講者は、現役の検査技師であることから、基礎的なPCR検査の知識や技術は持っている。慣れた手つきで試薬を小型試験管に入れたりしていたが、初めて見る機器の操作には「慣れるまでは難しい」との声も聞かれた。9月まで同様の研修を続ける。

 新機器は1台200万円。購入を希望する医療機関には県が全額補助する。県はこれまでに56台の発注を受け、うち40台の納入を済ませた。内訳は県内20台、県外20台で、静岡県内や大阪府内の病院にも納品したこともあるという。

 県内の医療関係者は「新しい機器を導入するには実績が必要だ。購入した医療機関から良い評判が伝われば、導入も進んでいくだろう」とみている。(時事通信社横浜総局 糟谷 裕美子記者)

時事通信社「厚生福祉」2020年9月1日号より)


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