治療・予防

先天性の血管異常―脳動静脈奇形
若年者でも脳出血を起こす恐れ(昭和大学病院脳神経外科 水谷徹教授)

 生まれつき脳の一部に異常な血管の塊がある脳動静脈奇形。異常血管はもろいため、破裂して脳出血を起こす恐れがある。昭和大学病院(東京都品川区)脳神経外科の水谷徹教授は「出血予防が重要です。脳神経外科を受診することを勧めます」と話している。

脳動静脈奇形とは

脳動静脈奇形とは

 ▽10万人に1人

 心臓から脳に血液を送る動脈と、脳から心臓に戻す静脈との間は毛細血管がつないでいる。脳動静脈奇形は、一部の毛細血管がなく、代わりに異常に拡張した血管の塊(ナイダス=巣)ができ、それを介して動脈と静脈が直接つながっている状態だ。発生率は年間10万人に1人程度で、脳のどこにでも発生し、大きさもさまざまだという。

 症状がない場合もあるが、突然、脳出血やけいれんを起こすことがある。動脈は血液を脳の隅々まで送るために圧が高いが、ナイダスは構造がもろいため、動脈から血液が流入し続けると圧に耐えられず、破裂して出血するのだという。その確率は年1~3%とされる(過去に出血がない場合)。

 「男性にやや多く、10~30代の若い世代で、脳出血やけいれんを起こして初めて脳動静脈奇形が分かるケースが典型的です。まれに、頭痛や頭を打ったなど別の理由でMRI(磁気共鳴画像法)やCT(コンピューター断層撮影)検査をした時、または脳ドックで見つかる場合もあります」と水谷教授は説明する。

 ひとたび脳出血が生じると、手足のまひ、言語障害、さらには命に関わることもある。脳動静脈奇形と分かったら、将来の出血を防ぐ治療を行うことが望ましい。

 ▽手術、血管内治療などで出血防ぐ

 治療法には、開頭してナイダスを摘出する手術、血管内に細い管(カテーテル)を通す血管内治療、ナイダスにピンポイントで照射する放射線治療の三つがある。血管内治療では、ナイダスにつながる血管にカテーテルで液状の物質を注入し、血管をふさいでナイダスを縮小させる。放射線治療では照射後1年から数年でナイダスが閉塞(へいそく)する。

 患者の〔1〕年齢〔2〕ナイダスの大きさと位置〔3〕過去の出血の有無〔4〕未治療で出血するリスクと治療による出血・後遺症のリスクとのバランス―などを考慮して治療法を検討する。まず血管内治療でナイダスを縮小させ、数カ月後に手術で摘出するなど複数の治療法を組み合わせることが多いという。一方、ナイダスが大きい、あるいは脳の重要な部位にある場合などは、すぐに治療方針を決めず、慎重に経過を観察することもある。

 水谷教授は「血管内治療を行う医師と手術を担う医師が連携し、計画的に治療するのが最善です」と指摘する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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