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前立腺がんが急増している理由
~検査で疑いが出ても慌てないで~ 三木健太・東京慈恵会医科大学本院泌尿器科診療副部長

 前立腺がんは、かつて日本では、あまり多くないがんとされていました。でも、最近はとても増えてきています。男性にとって気になる病気です。いつ頃から増え、どんな要因があるのでしょうか。2015年に国内初となる前立腺がん救済凍結療法を手掛けた東京慈恵会医科大学の三木健太先生にお話を伺いました。


 ◇30年で16.7倍

 海原 前立腺がんが増えていますね。

 三木 前立腺がんの罹患(りかん)数は最近、急速に増えています。

 「がん・統計白書2012年」によりますと、10年ごとでは、1982年の4362人(人口10万人に対する粗罹患率7.5)に対して、92年には2倍以上の9855人(同16.1)です。

 2002年がその3倍の2万9345人(同47.1)、12年がさらに、その2.5倍の7万3145人(同117.9)という具合です。

 また、年齢階層別の罹患数で見ると、年齢が上がるにつれて増える傾向があり、前立腺がんは典型的な高齢者のがんということになります。

前立腺がんと診断されていたことを最近公表した英ロック歌手、ロッド・スチュワートさん(74)。2年間の闘病を経て寛解したといい、前立腺がんの定期検診を受けるよう呼び掛けている【EPA時事】(写真は本文とは直接関係ありません)

 結局、日本の急速な高齢化が前立腺がんの罹患数の増加の一因であると考えられます。

 しかし、この年齢階層別の前立腺がん粗罹患率を、先ほどの10年単位で比較してみると、全ての年齢階級において、経時的に粗罹患率が上昇しています。

 このことは、日本の前立腺がん罹患数の増加の要因が、高齢化以外にも考えられることを意味します。もちろん、食生活の欧米化なども一因かもしれませんが、最も大きな原因はPSA検査(腫瘍マーカーの血液検査)の普及だとされています。

 海原 亡くなる方も増えているのですか。

 三木 日本の前立腺がん死亡数は1972年の975人、92年の4073人、2012年の1万1143人と増加を続けてきましたが、13年以降はわずかに低下してきました。

 男性がんの部位別死亡数(15年)で、前立腺がんは肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がんに次いで第6位です。

 前立腺がんと診断されても、必ず前立腺がんで死亡するわけでもありませんし、そもそも、生死とは関連のないような、非常に軽い早期の前立腺がんを多く診断している可能性もあるのです。

 もちろん、診断や治療技術の向上のおかげで、死亡数がそれほど増えていないとも考えられますので、この罹患数と死亡数の乖離(かいり)は明確には説明できません。

 実際に、日本の前立腺がん死亡数の将来予測では、15~19年で年間1万3400人とされていましたが、罹患数の上昇とは対照的に、死亡数については、この予想を下回っています。

 ◇50歳からはPSA検査

 海原 罹患率の上昇と死亡率の低下は、世界的な傾向なのでしょうか。

 三木 米国ではもっと顕著です。1980年代後半から前立腺がんの早期発見を目的にPSA検査が急速に普及し、前立腺がん罹患率が急上昇する現象が見られました。その後、診断や治療も普及してきたことにより、92年以降、死亡率が低下し、その後も持続しています。

 一方、日本ではPSA検査の普及は比較的遅く、その広がり方も緩やかであったため、死亡率が米国ほど劇的に低下とはいかないようですが、中長期的な死亡数の推移も注目されるところです。

 海原 健康診断や人間ドックなどを受ける方が以前よりも増え、腫瘍マーカー検査などが普及してきた影響もあるのでしょうか。

 三木 前立腺がんは、一般的な採血、検尿、エコー、レントゲンなどで発見することはとても難しいと思います。かつて見つからなかったようながんが発見されるとすれば、PSA検査が検査項目にあるかどうかだと思います。

 ご自身の判断でドックをされる際には、オプションでもPSA検査を加えることをお勧めします。一般的には50歳からはPSA検査が勧められています。

 公費で行われる自治体健診などでは、その自治体の判断により、PSAが含まれているところと、そうでないところがあり、足並みがそろっていません。

 また、職場の健診でも、その健康保険組合の懐具合次第で、PSAを行ってくれる企業も限られているようです。


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