教えて!けいゆう先生

手術後には一段とつらい面会制限
患者と家族が容易に会えない日常 外科医・山本 健人

 以前、とある医療ドラマを見ていて、ふと気になったシーンがありました。

 交通事故に遭い、搬送された病院で緊急手術を受けた患者さん。事情を聞きつけたご家族の方が、手術直後に病院にやって来ます。

 ベッドに寝かされた患者さんが、若い主治医とともに手術室から出てきた時、待っていたご家族が慌てた様子で医師に詰め寄ります。

コロナ禍のために、手術後の面会でさえ、制限される状況が続いています【時事通信社】

 「どういうことですか、一体何があったんですか、治療はうまくいったんですか、説明してください!」

 まくし立てるように質問するご家族に、医師が別室でゆっくり説明を始める。そんなシーンでした。

 ◆まず駆け寄る先は

 私はこのシーンを見て、何となく「妙だな」と感じました。

 というのも、手術後にやって来たご家族の方がまず駆け寄る先は、たいてい医師ではなく、患者さんご自身だからです。不安を抱えたご家族の方は、患者さんご本人がどんな様子なのか、意識はしっかりしているのか、会話はできるのか、そのことがまず気になるものです。

 もちろん、ドラマのようなシーンもないわけではありませんし、手術後の様子は人によってさまざまです。しかし、やはり医学的な情報を求める前に、まず患者さんと顔を合わせたい、と考える方は多いだろうと思います。

 実は今、この「家族同士が手術後に顔を合わせる」という大切な行為が難しくなっています。昨年から続く感染症禍において、患者さんがご家族と容易に会えなくなっているからです。

 ◆ひとたび感染すれば

 現在、多くの医療機関で、患者さんとご家族の方の面会が制限されています。

 入院中の患者さんは、さまざまな病気を抱え、一般的に「感染症に対してリスクが高い状態」です。ひとたび感染すると重症化しやすかったり、もともと治療中の病気が悪化する、あるいは治療を中断せざるを得なくなったりする恐れがあります。

 そうした観点から、院外から来られたご家族との面会は、制限せざるを得ない状況にあるのです。

 以前、私自身が初めて全身麻酔手術を受け、手術室から病棟にベッドで運ばれた時、家族が心配そうな表情で私のもとに駆け寄って来たことをおぼろげながら覚えています。

 大切な家族が手術を受ける、というのは、場合によっては自分のこと以上に気を病むものです。手術後、顔を見て安心したい、そう思う方は大勢いらっしゃると思います。

 感染症禍が落ち着き、ご家族同士が顔を合わせて喜びを共有できる、そんな日常が早く戻ればと願います。

(了)

 山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医、ICD(感染管理医師)など。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設3年で1000万PV超。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書に「医者と病院をうまく使い倒す34の心得」(KADOKAWA)、「がんと癌は違います 知っているようで知らない医学の言葉55 (幻冬舎)」など多数。

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