Dr.純子のメディカルサロン
コロナ禍明け「冬季うつ」にご注意
~晴れた日は外で太陽を!~ 甘いもの依存、過食にも目配り必要
新型コロナ感染症の拡大が一段落したように見えるこの冬。本当はもっと気持ちが明るくなるはずだったのに、いまひとつすっきりしないという声を聞きます。コロナ禍で外出しない生活習慣が付いてしまったことも背景にあるようです。日が暮れるのが早くなり、日照時間が減少してくるこの時期には、季節性気分障害、いわゆる「冬季うつ」と呼ばれる症状が気になります。コロナ明けのこの冬に注意が必要な気分対策について解説します。
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◇甘いもの、おっくう感、眠いに要注意
IT企業に勤務する24歳の女性は、コロナ禍が始まって以来、テレワークが続きました。緊急事態宣言が解除された後も、企業の方針でリモートワークが主体になりました。最近は、学生時代の友達から飲み会に誘われても出かけるのがおっくうで断ることが増え、ステイホームが続いています。出遅れたような気分もあり、何となく面白いことやワクワクすることもありません。気が付くと、コンビニで買ったアイスクリームや甘いものを食べていて、体重も増加傾向。だるくて眠くてやる気が出ず、集中力は低下。仕事で必要な連絡を忘れて、さらに落ち込むようになったということです。
日が短くなるこの季節に気を付けたいのが、季節性気分障害です。「冬季うつ」とも呼ばれているので、名前を聞いたことがある人も多いと思います。なぜこの時期に気持ちが落ち込むのかは、分かってはいません。幸せホルモンと呼ばれる神経伝達物質のセロトニンが低下することと関係があるともいわれています。また、概日リズム(体内時計)をつかさどるメラトニンという松果体のホルモンの分泌が、変化することも関わりがあるとされています。今年は緊急事態宣言が長く続いたため、戸外で太陽に当たる習慣が減少したことも関係しているかもしれません。
こうした冬季うつは、北欧や緯度の高い地域に住む人に起こりやすく、また、女性にリスクが高いのが特徴です。症状は、通常のうつに特徴的な不眠とは逆に、眠気が強かったり、過眠になることが多くあります。食欲は低下せず、逆に甘いものや炭水化物を食べ体重が増えるなどの症状が見られることもあります。
バイオレットライトの波長領域
◇バイオレットライトの不足
リモートワークで室内での作業が続き、寒くなるので外に出ないという習慣が続くと、太陽に当たる機会が減少します。これは概日リズム(体内時計)に影響する可能性があります。
慶応大学名誉教授の坪田一男先生によると、その体内メカニズムはこうです。太陽の光に含まれるバイオレットライトは、網膜のOPN(オプシン)5という光受容体を活性化させます。OPN5は脳波を含めた脳機能に影響し、うつや神経系の治療に有効な可能性があるということです。さらに、網膜にあるOPN4は、昼に太陽の光を浴びると、太陽のブルーライトにより活性化されてメラトニンの分泌を促し、概日リズムを整え、夜の睡眠を促してくれるということです。
こうした太陽の光に含まれるバイオレットライトは、ガラスで遮られてしまいます。家の中にいる生活習慣が続いた人は、対策が必要です。
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対策1 朝は窓を開けて太陽の光を
朝、太陽の光を浴びることで、14~16時間後に松果体からメラトニンが分泌されます。メラトニンは、自然な眠りを誘導してくれます。
対策2 晴れた日は外で太陽に当たる
バイオレットライトでOPN4とOPN5を活性化させるために、太陽に当たる時間をつくることが必要です。ガラスで遮られてしまうバイオレットライトですから、外に出て散歩するなどの時間をつくってはいかがでしょう。日焼けが心配な人は、日焼け止めを塗っても大丈夫ですので散歩してください。ただし、サングラスはバイオレットライトを遮断してしまいますからご注意ください。「紫外線による目への影響が心配」という人は、紫外線をブロックし、バイオレットライトを通すようなサングラスを選ぶといいかもしれません。
対策3 食事バランスに注意
食事のバランスを点検してはいかがでしょう。魚や肉・豆腐などのたんぱく質と野菜をきちんと取るようにして、甘いものや炭水化物への依存状態を改善することも大事です。鍋料理などは、簡単にたんぱく質と野菜を取ることができますから、過食防止には最適かもしれません。
こうした対策を取り予防していても気持ちの落ち込む場合は、心療内科や精神科を受診して相談してください。(了)
(2021/11/10 05:00)
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