治療・予防

ヒトからヒトへの感染まれ―サル痘
~多くは濃厚な飛沫・接触で感染(岡山理科大学 森川茂教授)~

 アフリカ中央部・西部の風土病とされるウイルス感染症の「サル痘(とう)」。その集団感染が5月以降、欧米を中心に相次いで起きている。世界的流行になる可能性や予防法について、岡山理科大学獣医学部(愛媛県今治市)微生物学の森川茂教授に聞いた。

サル痘の症状と致死率

サル痘の症状と致死率

 ▽多くは自然に症状改善

 森川教授は、サル痘について「原因ウイルスは、天然痘と同じ『オルソポックスウイルス属』で、現地に生息するリス、ネズミなどのげっ歯類が自然宿主です」と説明。天然痘は世界中で多数の死者をもたらしたが、ワクチンの普及で1980年に根絶が確認された。

 サル痘については「動物への感染が初めて確認されたのは58年。研究用のサルだったため、サル痘と命名されました。70年には中央アフリカで、最初のヒト感染例が報告されています」。多くは、感染した動物にかまれたり、その血液、体液や病変に触れたりすることで罹患(りかん)する。ヒトからヒトへの感染はまれだが、濃厚な飛沫(ひまつ)感染、あるいは接触感染でうつる。

 「5~21日(平均12日)の潜伏期間を経て発熱が起こり、その後顔や手に発疹が出始め、全身に広がることもあります。口腔(こうくう)内、性器の粘膜や目に生じることもあります」

 重症度は天然痘よりかなり軽い。「多くの場合、2~4週間で自然軽快します。ただ、幼児、妊婦、免疫が低下している人では重症になるリスクが高い。致死率は1~10%とされていますが、過去に集団感染が発生した先進国で死亡した人はいません」

 ▽大流行には否定的

 世界保健機関(WHO)によると、6月10日現在、28カ国で計1200人以上の患者が確認されている。いずれもサル痘が流行したことがない国で、WHOは「異例だ」とする。日本ではこれまで患者発生の報告はない。

 感染拡大について森川教授は「複数のパートナーを持つ男性同性愛者の間で感染が広がったようです。また遺伝子解析の結果から、現在の感染拡大は1人の感染者から始まっている可能性が高いことから、日本を含め、新型コロナのような爆発的な感染拡大の可能性は低いでしょう」と推測する。

 「天然痘ワクチンによる免疫はサル痘にも有効ですが、日本では76年に種痘の定期接種が終了したため、47歳未満の人は接種しておらず、サル痘への免疫もありません」。このため、若い人は特に「アフリカ渡航時のげっ歯類との接触やその肉を使った食事、アフリカから輸入されたげっ歯類をペットにすることには注意が必要です」と警告している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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