高齢になるほど増加
~重症化で壊疽も―末梢動脈疾患(東邦大学医療センター大橋病院 中村正人診療部長)~
心臓と脳の動脈以外を指す末梢(まっしょう)動脈が、何らかの原因で狭くなる「末梢動脈疾患(PAD)」。潜在的な患者を含めると300万~400万人と推測される。東邦大学医療センター大橋病院(東京都目黒区)循環器内科の中村正人診療部長は「PADは高齢になるほど増加し、重症化すると壊疽(えそ)を起こすこともあります」と警鐘を鳴らす。
PADの典型的な症状「間歇性跛行」
◇動脈硬化が原因
PADは脚の動脈に発症しやすい。主な原因は、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病による動脈硬化で、高齢者や喫煙者に目立つ。典型的な症状は間歇性跛行(かんけつせいはこう)だ。「一定の距離を歩くと、ふくらはぎなど脚に痛みやしびれが出て歩けなくなり、休むと楽になります。脚の動脈が狭窄(きょうさく)し、酸素の需要量に血流が追い付かなくなるために起こる症状です」と中村診療部長は説明する。
間歇性跛行は脊柱管狭窄症などの脊椎の病気でも起こるが、その場合は前かがみの姿勢で楽になる特徴がある。高齢者では両方を合併しているケースもあり、詳しい検査が必要だ。さらに、血流不足のため、脚にできた傷が治りにくくなることも。「重症化して壊疽を起こすと、2人に1人は脚の切断や死亡のリスクが伴います」
◇生活習慣の改善を
PADの診断には、足首と上腕で血圧を同時に測定し、比率を調べるABI検査を行う。通常、脚の血圧は上腕の血圧よりやや高い値が出るが、比率が0.9以下の場合はPADが疑われる。さらに、コンピューター断層撮影(CT)検査や超音波検査、磁気共鳴画像装置(MRI)検査で、狭窄している血管の場所を特定する。
治療は、禁煙などの生活習慣の改善と運動療法(ウオーキング)を行う。「脚が痛くなってもできるだけ歩くようにすると、血流を狭窄部位以外へ迂回(うかい)させる能力が向上し、歩行距離が伸びることが期待できます」と中村診療部長。本来は医師の監視下で行うのがベストだが、自分で行うことも可能だ。運動療法でも改善しない、症状が強いなどの場合は、カテーテルでステントやバルーンを入れて血管を広げる手術を検討する。
PADがある人は、動脈硬化が原因となる脳梗塞や心筋梗塞のリスクも大幅に上がっている。しかし、脚の症状のため軽視されがちで、服薬や生活習慣の改善が十分にできていない人が多いという。中村診療部長は「普段から自分の脚に注意を払い、症状に気付いたら早めに循環器内科や血管外科を受診してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2022/11/27 05:00)
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