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脳梗塞を予防する=前兆を早くつかめ

 かつて日本人の死因の1位を占めていた脳卒中。今は医療の発達や食生活の改善などで死亡率は低下している。同時に予防のために発症リスクを高める高血圧や高血糖を防ぐ啓発活動だけでなく、発作の前兆を早期につかみ治療することが重視され始めている。東京医科大病院(東京都新宿区)は、西新宿のビジネス街に接するという立地を活かし、患者以外の人も対象にした公開講座を開催し、情報発信に努めている。

 ◇公開講座で情報発信

 5月下旬の講座は、平日の午後5時から同病院大講堂で開催され、150人を超える人が集まった。実際に治療に携わっている医師2人が脳卒中の概要や治療法、発作の兆候を素早く見極める方法などを説明した。

 「脳の血管が詰まったり、破れて出血したりして急激に意識を失い、半身不随に陥る急性脳血管障害の総称が脳卒中だ。現在では、急性脳血管障害による死亡者の6割以上が脳血管が詰まって起きる脳梗塞で、脳出血は25%に低下している」

 脳神経外科の橋本孝朗講師は脳卒中と呼ばれる病気をこう解説した上で、死亡者の多い脳梗塞でも、治療法の進歩で高い治療効果を挙げている、と説明した。

 脳梗塞は大別して、脳の太い血管の内側に血液中のコレステロールが付着して固まり、そこに血小板が集まって血管をふさぐ「アテローム血栓性梗塞」、脳内を貫く細い血管が動脈硬化をおこして詰まる「ラクナ梗塞」、不整脈などによって心臓で作られた大きな血の塊(血栓)が流れてきて詰まる「心原性脳梗塞」に大別される。

 ◇顔面などの異常に注意

 一方、急性期の治療については、血管内の血栓を溶かす薬品を投与する「t-PA静注療法」が2005年から登場。発症後4時間半以内ならそれまでの治療実績を大幅に上回る成果を挙げている。

 t-PA治療法が有効でない場合もある。2010年からは、血管内に細い管(カテーテル)を入れて、そこから網状のステントを出して血管に付着した血栓をからめて引っ張り取る「血栓回収療法」が行えるようになった。

 橋本医師は「発症後早期に専門の医療機関で治療を受けることができれば、重度の後遺障害もあまり心配残さずに社会復帰できる可能性が高くなる。顔面や四肢の動きに異常を感じたり、ろれつが回らなくなったりするなどの兆候があれば、すぐ医療機関に行ってほしい」と、呼び掛けた。

橋本孝朗 東京医科大講師

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