治療・予防

冬でも流行注意
~「プール熱」―咽頭結膜熱(関西福祉大学 勝田吉彰教授)~

 咽頭結膜熱は子どもに多いウイルス感染症で、発熱とともに喉と目に症状が表れる。「プール熱」とも呼ばれるように夏に多いが、昨年は秋に患者が急増した。医師で感染症の流行に詳しい関西福祉大学(兵庫県赤穂市)社会福祉学部の勝田吉彰教授に対策を聞いた。

咽頭結膜熱(プール熱)の症状

咽頭結膜熱(プール熱)の症状

 ◇喉が痛み、目は充血

 原因はアデノウイルスで、▽感染者のせきやくしゃみの飛沫(ひまつ)を吸い込む▽飛沫が付いたタオルを共用する▽ウイルスを含むふん便に触れた手が口に触れる―といった経路で感染する。プールでは、消毒薬の濃度が低下した水が感染のリスクとなる。

 5~7日間の潜伏期間を経て発症。急に発熱し、喉の赤み・痛み、頭痛といった症状と目の充血、こりこり感、目やになどが表れ、3~5日間程度続く。

 新型コロナウイルス感染症と同じ5類感染症で、全国の医療機関からの報告数は例年、5月ころから増え、6~7月をピークにその後減少する。しかし昨年は、8月から減るどころか増え始め、10月末までに2倍以上になった。

 このような現状について、勝田教授は「感染症の流行には『火種』と『導線』があり、新型コロナの5類移行で人々の動きが活発になり導線が太くなった。感染対策に有効な手指衛生への配慮が低下しつつあることも関係しています」と説明する。

 ◇せっけんで手洗い

 治療としては、アデノウイルスに特化した抗ウイルス療法はなく、解熱鎮痛薬、点眼薬などで症状を和らげることが中心となる。まれに肺炎などを起こす場合を除けば経過は良い。

 「予防の基本は、家庭や公共施設でタオルなどの共有を避けること、エアコン使用中も定期的に換気すること、人の密集を避けることです。体調が悪いときは出勤や登校などを控え、会話の際は至近距離を避け、マスク着用を心掛けてください」

 アデノウイルスはアルコール消毒に対して抵抗性があるため、手指はせっけんと流水で洗う。ウイルスを含む飛沫や排せつ物などが付着した物を消毒するときは、マスクと手袋を着け塩素系消毒薬を使う。「塩素系消毒薬は手指消毒には使用できないので、皮膚に付かないように注意してください」と勝田教授は話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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