足の悩み、一挙解決

第6回 外反母趾はハイヒールのせいじゃない!?
~実は遺伝の影響が大きいのです~ 足のクリニック表参道院長 桑原靖


 ◇インソールで支える

 湿布や痛み止めの内服などで痛みが楽になっても、根本的な治療にはなりません。原因が足の骨格構造のゆがみですから、それを整えなければ、痛みが再発するか、痛みはなくなっても、足の変形が進んでいってしまいます。

 このため、靴の中敷き(インソール)を使って、崩れたアーチを支えます。初期の外反母趾であれば、インソールを使うだけで痛みが出なくなり、足の変形の進行も防げます。アーチを支えるインソールはさまざまなものが売られていますが、できれば試着してから購入した方がいいでしょう。

 市販のものでは合わない場合、治療用のインソールをオーダーメードで作る方法もあります。足を専門とした外来では、一人ひとりの患者さんの足やライフスタイルに合ったインソールを、医師の処方の下で専門の義肢装具士が作ります。

外反母趾の(左から)手術前と手術後


 ◇根本治療は手術

 すでに足の変形が進んでしまった場合の根本的な治療法は、手術が有効です。外反母趾の手術といっても、親指に何かをするのではなく、正確にはその手前の骨、中足骨を矯正することになります。

 外反母趾の手術については「長期の入院が必要」とか、「術後の合併症予防のため片足ずつ慎重に行う」など、執刀する医師によって、さまざまな考え方や手術術式があります。

 当クリニックでの外反母趾の手術においては、両足を一度に手術するなら3~4日、片足なら1泊2日からの入院治療を行っています。クリニックに入院設備はないので、提携病院に医師が出向いて執刀します。入院が必要なのは全身麻酔で行うためです。

 ◇傷も目立たず再発は少ない

 私は年間200件以上、外反母趾の手術を執刀していますが、人の足の形や特徴、その崩れ方は多種多様なため、何が適切なのかを常に考えながら行っています。崩れた足の原因と特徴を考え、手術で本来あるべき理想的な骨格構造に近づけることにより、再発する可能性は少なくなります。

 手術術式は主に「シェブロン法」といって、くさび形に骨を切り、本来あるべき位置に戻して、骨の並びを整える方法を用います。金属製のネジは使わず、生体に吸収される素材(ポリ-L-乳酸/ハイドロキシアパタイト性)でできたネジを使って骨同士をつなぎます。ですので、手術後に金属が骨を刺激することもなく、あとでネジを取り出す再手術も必要ありません。

 骨を切るということは、無理やり骨折させるようなものですから、完全にくっつくまでには約3カ月かかります。ですが、手術で骨同士が接する面を、宮大工のような接合面できちんと合わせてつなぐため、術後の松葉づえやギプス固定などは必要としません。 また、シャワー浴であれば、入院中から可能で、手術翌日から移動(歩行ではない)ができます。退院後は、医療用の特殊な靴なども必要なく、少し大きめの靴を履けば、術後1週間程度で職場復帰(デスクワークから)が可能です。

 足の側面を4~5センチ切開しますが、目立たない場所なので、上から見れば傷は全く分かりません。


 ◇外反母趾は早期発見・早期介入が大切

 外反母趾は結果として親指が曲がるトラブルであり、親指そのものが原因ではありません。ですので、引っ張ったり、何かを挟んだりして治る可能性は少なく、長い時間をかけて徐々に完全脱臼してしまった関節が、セルフケアで戻ることはあり得ません。

 大事なことは、足の骨格構造と個々の形を見極め、痛み度合いや変形度合い、生活スタイルなどから、治療効果をどこに定めるかということになります。

 早期であれば、適切な靴の使用や選び方を知るだけで良くなることもありますし、歩き方の改善や日々のストレッチが必要な方もいます。

 変形や痛みが強い方は、それぞれの骨格構造と形に合わせた治療用インソールを作成して使用することで、進行を抑制し、痛みを緩和させることができます。ただし、インソールは足に残っている機能を最大限に引き出すもので、歩行機能はある程度改善しますが、変形した指が治ることはありません。

 もし、脱臼・変形した指を治すのであれば、手術による矯正が唯一の根本治療となります。

 ◇関節リウマチを見逃さない

 外反母趾と思い込んでいたら、実は関節リウマチだったという場合もあるので、自己判断はせずに、早めに医療機関を受診してください。

 関節リウマチは人口の1%ほどで、手から始まるのが普通だと思われがちですが、足から始まる人も20%、5人に1人くらいいます。関節リウマチだったとしても、早期発見、早期治療なら、その後の経過も良好です。

(文・構成 ジャーナリスト・中山あゆみ)

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