「医」の最前線 「新型コロナ流行」の本質~歴史地理の視点で読み解く~

既存の5類感染症以上の対策を
~分類見直し後に―新型コロナ~ (濱田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授)【第57回】

 日本政府は、新型コロナウイルス感染症を現在の2類相当から5類に移行することを正式に決定しました。移行日は2023年5月8日で、それまでに新たな医療体制を稼働させるためのさまざまな準備が行われます。新型コロナの流行が発生してから3年以上が経過し、私たちはワクチンや治療薬で流行を制御できる状況になってきました。しかし、新型コロナが5類になっても、インフルエンザなど既存の5類感染症以上の対策を続けながら、この感染症に対処していかなければなりません。今回は5類移行後の新型コロナ対策の方向性について検討してみます。

5類移行を決めた政府の対策本部の会合

5類移行を決めた政府の対策本部の会合

 ◇発生期から制御期の流行対策に

 新型コロナウイルスが日本で流行し始めた20年初頭の時点で、この病原体は感染力が強いだけでなく重症度も高く、緊急事態宣言などの行動制限をかけながら流行を抑えていく必要がありました。このため、新型コロナ感染症法上は新型インフルエンザ感染症の類型に置き、2類感染症相当の感染対策がとられたのです。しかし、21年からワクチン接種が開始されるとともに、22年からは病原性の低いオミクロン株が流行することで重症度は低下し、制御可能な感染症になっていきました。

 このような経緯から、新型コロナを現在の2類相当から他の類型に移すことが課題になり、筆者も本連載でその必要性を述べてきました(「2類相当から変更は妥当?~『新型コロナ枠』の創設も~」)。発生期から制御期の流行対策に移行し、社会経済の再生を図る段階になったのです。ただし、現在の感染症法では新型コロナの移動先が5類に限られてしまうため、筆者は新たな「新型コロナ枠」の創設などを提案しましたが、最終的に政府は23年5月8日から5類に移行することを決定しました。

 インフルエンザ以上の対策を

 5類に分類されると、インフルエンザと同等の感染症といったイメージを持ちますが、新型コロナにはそれと異なる点があります。例えば、感染力は新型コロナの方が3倍近く強く、その差はオミクロン株になってから、さらに増大しています。重症度はワクチン接種などにより低下してきましたが、高齢者やハイリスク者が感染すると致死率はまだ高くなっています。さらに、新型コロナでは後遺症を起こす者が多いことや、ウイルスの変異が頻繁に出現するなど、インフルエンザには見られない特徴があります。

 こうした点から、新型コロナが5類になっても、インフルエンザと同じ対策ではなく、それ以上の対策が必要になるのです。

 それでは、どのような対策を加える必要があるのでしょうか。

 ◇5類移行の本当の意味

 5類になった場合の対策の変化は、医療費が公費負担でなくなること、感染者の隔離がなくなること、どの医療機関でも診療できることなどが紹介されていますが、5類になることの本当の意味はもっと深いところにあります。

 新型コロナのように広くまん延する感染症の対策は、「感染者が他人に伝播させない対策」と「国民が感染や重症化しない対策」の二つに分けられます。2類相当の場合、前者には強い法的措置がかかり、後者についてもワクチン接種や療養支援などで行政が幅広い対応をしてくれます。しかし、5類になると、「感染者が他人に伝播させない対策」は法的措置がほとんどなくなり、「国民が感染や重症化しない対策」は原則として国民自身が行うことになるのです。

 こうした5類への対応は、インフルエンザのように私たちが長年経験してきた感染症であれば問題ありませんが、新型コロナの場合は初めての経験であり、国民の皆さんもどのように対応するかが心配になると思います。

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