「医」の最前線 「新型コロナ流行」の本質~歴史地理の視点で読み解く~

新型コロナワクチンの定期接種化
~対策は新たなフェーズに~ (濱田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授)【第71回】

mRNAワクチン開発への貢献でノーベル賞を受賞したカリコ氏(左)ら=AFP時事(2023年10月)

mRNAワクチン開発への貢献でノーベル賞を受賞したカリコ氏(左)ら=AFP時事(2023年10月)

 ◇副反応が少ないタイプへ

 新型コロナの流行制圧に当たり、mRNAワクチンは大きな功績を残しました。流行が始まってからわずか1年ほどで効果の高いワクチンが開発されたのは、mRNAワクチンだからできたことです。この功績が評価され、その開発に貢献した米ペンシルベニア大学のカリコ博士らが、23年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 その一方で、mRNAワクチンは接種部位の腫れや痛みなどの局所反応、発熱や倦怠(けんたい)感などの全身反応がかなり高率に起きます。この副反応がつらいので、追加接種をためらっている人もかなり多いのではないでしょうか。

 日本で今までに接種を受けた人の大多数にはmRNAワクチンが使用されており、新型コロナワクチンそのものが、局所反応や全身反応を起こしやすいと考える人も多いと思います。しかし、日本ではmRNAワクチン以外に組み換えタンパクワクチンも少数使用されており、このワクチンでは発熱や倦怠感などの全身反応が少ないことが、厚労省の研究班から報告されています。

 mRNAワクチンは流行が始まったばかりの時期には救世主になりましたが、流行が安定してきた現時点では、組み換えタンパクワクチンなど副反応のより少ないワクチンを使用していくことも考えなければなりません。国内でも、独自に開発した組み換えタンパクワクチンの承認申請を出しているメーカーや、インフルエンザと同種類の不活化ワクチンを開発しているメーカーがあります。特に今後、ワクチン接種が有料になれば、副反応のより少ないワクチンを選ぶ人が増えるのではないでしょうか。

 新型コロナのワクチン対策が新しいフェーズに移行するのに伴って、その法的な扱いだけでなく、ワクチンの種類についても考えていく時期だと思います。(了)

濱田特任教授

濱田特任教授


濱田 篤郎(はまだ・あつお)氏
 東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授。1981年東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学留学。東京慈恵会医科大学で熱帯医学教室講師を経て、2004年に海外勤務健康管理センターの所長代理。10年7月より東京医科大学病院渡航者医療センター教授。21年4月より現職。渡航医学に精通し、海外渡航者の健康や感染症史に関する著書多数。新著は「パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策」(朝日新聞出版)。

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