大久保公裕 医師 (おおくぼきみひろ)

日本医科大学付属病院

東京都文京区千駄木1-1-5

  • 耳鼻咽喉科・頭頚部外科
  • 教授、部長

耳鼻咽喉科 頭頸部外科 アレルギー科

専門

鼻アレルギー、内視鏡下副鼻腔手術、花粉症

大久保公裕

免疫アレルギー性疾患のエキスパートであり、花粉症治療においては日本を代表する存在。国や企業と共同でアレルギー性鼻炎の新しい免疫療法の開発を積極的に進めている。花粉症の根治治療でもある舌下免疫療法の開発では、厚生労働省や東京都の承認のもと、全国に先駆けて臨床試験を行い、成果を上げている。診療の際は、患者の診療満足度を高めることに重点を置くため、初診の問診は時間をかけて丁寧に行う。バリエーションの多い診療の中から、患者の求める治療法を提案するよう心がけている。

診療内容

花粉症の有病率は国民全体の26.5%、日本で最も多くの人が罹っている疾患であり、日本は世界で最も花粉症の症状が重い国と言われている。大久保医師によると、鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどに悩まされている方は多くても、耳鼻咽喉科できちんと「花粉症」の診断をされている人は少なく、正しく理解されていないまま「花粉症」という言葉だけが一人歩きしているのだという。「花粉症は治らない」と思いこんで、大半の人が一時的に症状を緩和させるために、市販薬や専門ではない医療機関に「花粉症のクスリください」といって、クスリを処方してもらっているのが現状。死に至る病気でないとはいっても、国民の4人に一人が同時期に同じ症状を訴え、医療機関や薬局で薬を処方してもらう。これが何十年もくりかえされるとしたら、労働生産性が低下するだけでなく、国の医療費負担も半端な額ではなくなる。ということで、厚生労働省や地方自治体も花粉症対策には力を入れている。大久保医師は、「花粉症は治らない」という常識を覆すがごとく、新しい治療法の開発に積極的に取り組み、医療費削減のための施策にも大きく貢献している。
花粉症の診察で大切なことは、まず、専門医に正確に診断してもらうこと。「花粉症はさまざまな要因が絡み合って発症するため、花粉症の知識と治療法を熟知している医師でないと治せません。また、花粉症に似た病気やアレルギーはたくさんあり、他の原因で症状がつらくなっている場合もあります。一般の市販薬や専門でない医療機関では、だれに対しても同じような通り一遍の治療しか行いません」(大久保医師)
大久保医師の初診の診察では、どんな症状か、いちばんつらい症状は何か、その症状はいつ始まったか、どんなときに悪化するのか、今までどんな検査と治療を受けてきたのか、花粉症以外のアレルギーはあるのか、家族や親族にアレルギーの病気の人はいるか、住宅環境、職場環境、ペットの有無など、39項目の質問が書かれた問診表を手元において、丁寧に問診を行う。初診の問診だけで20分程度の時間をかけるのだという。
その後、患者の症状に合わせて適切な検査を行う。鼻の粘膜を調べる検査、血液検査、皮膚反応検査、鼻誘発検査、また、鼻づまりが強い方の場合は、副鼻腔炎やポリープの可能性がないか、エックス線やCT検査などの検査を行う。
花粉症と診断されたら、花粉症の時期だけ症状がやわらげばよいのか、根治させたいのか、患者の要望に応えて治療法を決定する。「患者さんの症状やライフスタイルに合わせて、一番希望に近い方法を提案します」(大久保医師)

花粉症の治療は大きく分けて下記の3つの方法がある。
1.)薬物療法…花粉症の時期だけ、症状を抑えて軽くするための対処療法。飲み薬、点鼻薬、点眼薬などがある。症状が重い場合は、花粉が飛散する1週間前からクスリを飲み始め、シーズンが終わるまで飲み続けるという「初期療法」が基本となっている。また、血管収縮薬の入った市販の点鼻薬は依存性が高いので注意する。注射1本で花粉症を抑えるという治療法は副作用が多いので専門医は行わない。
2.)手術療法…花粉症の手術は、鼻の粘膜を凝固して、空気の通り道を空けるという方法。いろいろな方法を試してもよくならない、副作用でクスリが使えない人が対象となる。レーザー焼却術、電気凝固術、超音波メス凝固術、ラジオ波凝固術などの手術法がある。粘膜の手術は、アレルギーそのものを治療する方法ではなく、症状が抑えられるのは数カ月程度。花粉が飛び始める1~2カ月前に行うのがベスト。
3.)アレルゲン免疫療法(減感作療法)…抗原(花粉症の場合は花粉エキス)に体をなれさせ、体質を変えて症状を起こしにくくする治療で、根本的に治療する唯一の方法。スギ花粉症であれば、患者さんの8割程度に有効といわれている。ただ、週2回~月1回の注射のために3年以上通院しなければならない。現在、2014年からはスギ花粉症にはスギ花粉エキス、2016年からはダニハウスダスト通年性アレルギー性鼻炎にはダニエキスを口から入れる舌下免疫療法が保険適応になっており、日本医科大学付属病院でも多くの患者が、その効果を実感している。現在は少数の治療回数たとえば6回の注射ですむペプチド免疫療法やLUMP(リポソーム膜関連タンパク)免疫療法など、苦痛の少ない手軽に受けられる療法に期待が高まっている。
「10歳の子と60歳の人、サラリーマンと主婦が同じ治療法で良いわけがありません。環境、立場が違えば治療法も違ってきます。花粉症かな?と思ったら、専門医のもとでしっかり受診し、それぞれにあった治療法を模索、選択してほしい」(大久保医師)
10年20年後に、どんなに花粉が飛び続けていたとしても、大久保医師のようなエキスパートが、それに対抗できる開発に取り組み、解決策を生み出してくれることを願ってやまない。

医師プロフィール

1984年 日本医科大学卒業
1988年 同大学院耳鼻咽喉科卒業
1989年~1991年 アメリカ国立衛生研究所(NIH)留学
2000年 日本医科大学 耳鼻咽喉科 准教授 就任
2010年 日本医科大学耳鼻咽喉科 教授 就任