英・Western General HospitalのAlexander T. Elford氏らは「クローン病患者におけるJAK阻害薬ウパダシチニブの治療継続状況および臨床効果に関するリアルワールドデータを後ろ向きに解析した結果、24週間時点の治療継続率は81.7%と高く、臨床効果も維持されていた」とGastroenterol(2024年4月3日オンライン版)に報告した(関連記事:「経口JAKウパダシチニブはクローン病にも有効」、「ウパダシチニブはIBD診療を変えるか」)。

実臨床データの報告は限られている

 ウパダシチニブは3件の第Ⅲ相試験〔寛解導入療法試験(U-EXCEEDおよびU-EXCEL)、維持療法試験(U-ENDURE)〕の結果に基づき、中等症から重症の活動性クローン病治療薬として米国、英国ならびに日本で承認されている。しかし、リアルワールドにおける有効性を評価した研究は限られており、発表された報告も寛解導入に的を絞ったものが中心だ(Clin Gastroenterol Hepatol 2023; 21: 1913-1923J Crohns Colitis 2023; 17: 504-512)。

 Elford氏らは今回、英国保健サービス(NHS)の関連病院5施設において、2021年9月~24年1月にウパダシチニブを処方されたクローン病成人患者の全データを薬局処方記録および電子医療データから抽出し、解析した。

24週時点でも81.7%の治療継続率

 12週間以上の追跡データがある93例を解析対象とした。主な背景は年齢中央値が36歳〔四分位範囲(IQR)26~49歳〕で、男性が51例(55%)。ウパダシチニブの前に処方されていた先端治療薬(advanced therapy)にはTNFα阻害薬、IL-12/23およびIL-23阻害薬、抗インテグリン薬、JAK阻害薬、カルシニューリン阻害薬があり、91例(98%)にTNFα阻害薬が処方されていた。また、82%の患者がこれらのうち2剤以上を使用していた。

 ベースラインの疾患活動性は、Harvey-Bradshaw Index (HBI)が8点(IQR 5~11点)、C反応性蛋白(CRP)が10mg/L(同3~30mg/L)、血清アルブミンが35g/L(同32~40g/L)、便中カルプロテクチン(FCAL)が615μg/g(同211~1,229μg/g)だった(いずれも中央値)。

 追跡期間の中央値は25週(IQR 15~42週)で、Kaplan-Meier法による12、24、52週時点のウパダシチニブ治療継続率はそれぞれ87.1%、81.7%、62.8%だった。

 また、12、24、52週時点におけるステロイドフリーの臨床寛解率(HBI 5点未満)はそれぞれ64%、48%、38%、CRP寛解(5mg/L以下)率は55%、38%、19%、FCAL寛解(250μg/g以上)率は50%、36%、19%であった。

 寛解導入療法はウパダシチニブ45mg/日から開始したが、81例は維持療法に移行し、うち18例(22%)が15mg/日、63例(78%)が30mg/日に減量した。

 有害事象は37例(43件)発生し、そのうちウパダシチニブ中止に至ったのは、感染症(14例)、帯状疱疹(3例)、頭痛(4例)などであった。

維持療法期間での有用性も示唆

 以上の結果を踏まえ、Elford氏らは「今回の対象は、2クラス以上の先端治療薬の使用歴を有する極めて難治性のコホートであったが、24週時点での治療継続率は81.7%だった。12週までの寛解導入療法に対して、64%の患者が臨床寛解、55%がCRP寛解、50%がFCAL寛解を達成し、その後の維持療法期間でも、ある程度の患者が寛解を維持できた」と結論。「今回のデータは、第Ⅲ相試験データおよびリアルワールドコホートを対象とした既報に、貴重な情報を追加するものである」と付言している。

木本 治