皮膚筋炎の治療に用いられるメトトレキサート(MTX)は、間質性肺炎の副作用が知られている。そのため、もともと間質性肺炎の高リスク集団である皮膚筋炎患者に対し、MTXの使用をためらう医師もいる可能性がある。しかし、その懸念を払拭する知見が報告された。米・New York University Langone HealthのJill T. Shah氏らは、皮膚筋炎患者におけるMTXの使用と間質性肺炎発症の関連を調査するコホート研究を実施。MTX使用による間質性肺炎リスクの上昇は認められなかったJAMA Dermatol2024年5月1日オンライン版)に発表した。(関連記事「薬剤誘発性皮膚筋炎の原因薬剤は?」)。

大規模観察研究プログラムAll of Usのコホートを調査

 今回の研究は、米国立衛生研究所が主導する大規模観察研究プログラムAll of Us に2018年5月〜22年7月に登録された皮膚筋炎患者のデータを用いた。組み入れ基準は2010年1月1日以降に皮膚筋炎と診断され、その後免疫調節療法(アザチオプリン、免疫グロブリン静注、MTX、ミコフェノール酸モフェチル/ミコフェノール酸、リツキシマブ、全身性ステロイドを含む)を受けた患者とした。皮膚筋炎の診断に先行して間質性肺炎が認められたケースは除外した。

 対象をMTX使用の有無で分類し、人口統計学的背景や臨床的特徴、他の免疫抑制薬の使用状況を比較した。間質性肺炎の診断後にMTXの投与が開始された患者はMTX非使用例と見なした。Kaplan-Meier法および多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、MTX使用と間質性肺炎リスクとの関連を評価した。

MTX使用の有無で間質性肺炎発症率に差なし

 組み入れ基準を満たした皮膚筋炎患者は315例中163例で、うち58例(36%)がMTXを使用していた。非使用群に比べMTX使用群では皮膚筋炎関連悪性新生物が少ない(P<0.01)、リツキシマブ使用例が多い(P<0.02)という特徴が見られたものの、年齢(中央値59歳 vs. 58歳)、性(女性75% vs. 90%)など、その他の項目に有意差はなかった。

 Kaplan-Meier法による解析の結果、間質性肺炎発症例はMTX投与群で9例(16%)、非投与群で18例(17%)と、両群に差がなかった〔ハザード比(HR)0.79、95%CI 0.35〜1.78、P=0.56〕。性、悪性新生物、リツキシマブ使用を調整した多変量Cox比例ハザード回帰モデル解析においても、MTXの使用による間質性肺炎リスクの上昇は認められなかった(HR 0.79、95%CI 0.33〜1.86、P=0.59)。

関節リウマチ患者の研究と対照的な結果

 以上を踏まえ、Shah氏らは「皮膚筋炎患者において、MTXの使用は間質性肺炎リスクを上昇させなかった」と結論した上で、MTXが肺炎および肺線維症の発症に関連したとする関節リウマチ患者を対象とした研究(Front Med 2019; 6: 238)と対照的な結果であると考察。

 研究の限界として、電子カルテに基づく診断および診断時期の信頼性や処方バイアスの存在(間質性肺炎リスクが高い患者へのMTX処方回避の可能性)などを挙げ、MTX投与患者の間質性肺炎リスクを検証する前向き研究の必要性を指摘している。

日本では保険適応外だが、原則としてMTX内服薬を多発性筋炎・皮膚筋炎に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める旨、通知されている

(編集部)