治療・予防

「パンデミック」新型コロナ
学会が症例、診断遅れで重症化報告も

 ◇透析患者の感染例も

 重症化の可能性が高くなる血液透析を受けている患者の例も報告されている。透析患者の感染例は国内で初めてという。患者は69歳の男性で、海外渡航歴はない。タクシー運転手として外国人と接したが、風邪のような症状の乗客を乗せたことはなかった。

感染拡大防止のため、休業になった東京・銀座のアップルストア

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 2月14日に発熱せきが始まり、透析を受けていた病院でインフルエンザと診断され、治療を受けて19日には熱は下がった。24日に再び38度の発熱があり、25日には激しいせきと呼吸困難の症状が悪化し、同じ病院に入院。胸部X線検査で右の肺に炎症が見つかり、インフルエンザ後に併発した細菌性肺炎と診断された。

 抗菌薬が投与されたが効果は乏しく、肺の炎症や呼吸状態が悪化し、酸素投与も必要になって29日、別の医療機関に転院した。この後も呼吸状態は悪化して両肺に炎症が拡大。PCR検査をしたところ新型コロナウイルスの感染が確認され、3月1日に透析管理可能な感染症指定医療機関に再び転院した。

 マラリア治療薬で症状改善

 その後も一定以上の酸素投与が必要とされ、肺炎の症状はさらに悪化。このため2日から、マラリア治療薬のヒドロキシクロロキン硫酸塩(商品名「プラケニル」)を投与したところ、3月6日時点までに症状が大きく改善した。この薬はマラリア治療薬および予防薬で、皮膚エリテマトーデスや全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、重症急性呼吸器症候群(SARS)の治療にも使用されている。今回の新型コロナウイルス流行でも中国で使用され、一定の効果があったと報告されている。

 ◇情報の十分な共有を

 日本感染症学会理事長の舘田一博東邦大学教授は「先に流行して患者が多く出た中国だが、診療に役立つ具体的な情報は十分ではない。また、日本とは医療環境が異なることもあって参考にしにくい部分もある」と話し、国内で得られた患者の知見やその後の診療経緯に関する情報の必要性を強調。その上で「得られた情報をできるだけ早く共有して治療に役立てたい」と話す。(喜多壮太郎・鈴木豊)

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