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関節変形に人工関節の置換手術
~高齢化とコロナで持病管理も必要に~

コロナ前はマスク無しで 密着してのリハビリも可能だったが…【東京医科大学病院提供】

 軟骨の摩耗や骨の変形で、激しい痛みをもたらすのが膝や股の関節の変性性関節症だ。痛みにより歩行困難になるだけでなく、転倒を恐れて外出を控えるようになるなど、日常生活への影響は大きい。抜本的治療法としては変形した関節部分を金属やセラミックの人工骨に置き換える人工関節置換手術があるが、医師に一定の技量が求められる上、患者も術後のリハビリが必要になる。患者の高齢化も進み、持病の管理やリハビリの効率化なども求められている。

 2020年5月に「人工関節センター」を開設し、難しい症例への対応や医師らスタッフの教育にも力を入れている東京医科大学病院でも、事情は同じだ。センター長でもある山本謙吾教授(整形外科)は「かつて、膝関節は70歳代、股関節は60歳代の患者が中心だったが、現在では80歳代も増加し、手術中の全身管理や術後のリハビリのハードルは上がっている」と説明する。

手術時の感染制御のために完全装備で行われる置換手術【東京医科大学病院提供】

 また、高齢者の中には、人工関節素材の耐久性が飛躍的に伸びる以前に置換手術をしたため、インプラントが摩耗してしまい、再度の手術を必要とする人もいるという。山本教授は「手術法や人工関節自体は大きく進歩したが、医療的には十分なケアが必要な事例も増えている」と指摘する。

 このため、同センターでは、手術1カ月前の検査入院で、糖尿病や高血圧など患者の持病の有無や管理状況、術前の歩行能力や日常生活への支障の度合いなどを把握するようにしている。その後、体調や術後のリハビリ計画などをまとめて手術に臨んでいる。

 「手術後も感染症などの合併症を警戒しながら、歩行や日常生活動作獲得のリハビリテーションのために最低でも2~3週間、人によっては1カ月ほど入院してもらっている」と山本教授。特に高齢者の場合は、体力や運動能力が低下している上、人工関節を取り付ける骨も弱くなっていることが多いため、慎重な診療とリハビリが求められるという。同センターは、難しい再置換を含めて月平均25件前後の置換手術をこなしている。

 新型コロナウイルスの感染拡大は同センターの活動にも影響している。2020年春の緊急事態宣言時には手術が止められた。「あの時は、交通事故で搬送された患者のなどの緊急手術や急を要する、がんの手術以外は止められました。1カ月延期されれば、それだけ患者の体力や筋力は低下してしまうので、いつ手術が再開できるか気をもみました」と山本教授は振り返る。

整形外科とリハビリテーション科が中心で設立されたセンター【東京医科大学病院提供】

 その後も、感染症患者の入院の長期化で病床がふさがってしまうことや、術後リハビリで理学療法士が患者と密着せざるえないために、新型コロナの感染リスクが生じてしまうことなど、対応を迫られる問題が相次いだ。結果、リハビリ時にはマスクだけでなくフェースガードも着用するなどの対策をまとめ、2020年7月にはほぼ通常通りの受け入れが可能となった。

 ただ、影響がなくなったわけではない。「本来なら一定のレベルまでリハビリするために、患者さんの自宅近くのリハビリ病院に転院してもらうのが良いのだが、『新型コロナの感染対策』を理由に受け入れてもらえない例もある。このため、さらに入院期間が延びしてしまったり、リハビリを完全に終えられずに退院・帰宅せざるを得なかったりする例も出てきている」と同教授は指摘する。(了)

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