インタビュー

健康管理、十分な準備を=中高年の山登り―高山守正医師

 熱中症、低体温症、虫刺され

 熱中症は、気温や湿度が高い場所での激しい運動、長時間の運動により体内の水分や塩分が減って、十分に汗をかけなくなった場合に起きる。北アルプスなど高い山ではほとんど起きないが、奥多摩などの低い山で夏場の登山ではよく見られる。

 水分補給が大切だが、水分だけを取るとむくんだり、血液中の電解質が低下してけいれん(熱けいれん)を起こしたりすることもある。「水だけではなく、カルシウムやカリウムなど無機質が入ったスポーツドリンクも飲むように」と高山医師はアドバイスする。熱中症にかかった場合は水分補給のほか、木陰や岩陰など直射日光が当たらず、風通しの良い場所で安静にさせよう。

 反対に、夏場でも高所で長時間雨にぬれたままだと、低体温症になる可能性がある。体をぬらさないことが一番重要だが、ぬれた場合でもできるだけ体温が逃げない服を選ぶ必要がある。

 「高度2000―3000メートルだと、夏場でも寒冷前線が通過すれば気温は5度前後に下がる。雷雨に降られる可能性があるので、雨にぬれると繊維の間に水分をため込んでしまう木綿のTシャツは厳禁だ。ぬれて風に吹かれると急速に熱が奪われる」と同医師。ぬれても繊維の間に空気をため込み、体表面の温度を下げにくいウールや、発熱機能のある繊維でできた下着を薦める。

 また、夏山では虫が多い。刺されないよう肌の露出が少ない服を選ぼう。虫よけやかゆみ止めなどの塗り薬は必須。スズメバチに刺されると、急激に循環器異常が現れるアナフィラキシーショックで重篤な症状に陥る場合もある。ハチ・アレルギーの人は特に、アナフィラキシーショックに対応できる補助治療剤「エピペン」を持っていくとよい。

 胃腸薬など一般の薬や保険証のコピーは必ず持参を。山岳保険への加入もお勧めする。いざ、遭難しヘリ搬送されると、多額の出費となる。そのような場合の経済的負担が全く違う。


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