こちら診察室 痔を治す
ほっておくとどうなる?
~痔の悪化と合併症の危険性~ 【第6回】
◇こんな症状が出たらすぐに受診! 危険なサイン
・高熱や悪寒を伴う肛門の激痛(膿瘍形成の疑い)
痔の中でも、特に外痔核や痔瘻の痛みは非常に強く、日常生活に支障を来すことがあります。痛みが強くなった場合は、炎症が進行している可能性があり、早急に受診することが求められます。
トイレの後や排便時に鮮血が見られる場合は、ただの痔では済まないことがあります。特に、血液の色が鮮やかであればあるほど注意が必要です。出血は痔以外の病気のサインであることもあるため、専門医の診断を受けることが重要です。
・肛門から膿が出る(感染症の兆候)
肛門からの膿の排出は感染症が進行しているサインです。もしこの症状を軽視して放置すると感染が広がり、全身に影響を及ぼすこともあります。特に、免疫力が低下している方や糖尿病の方は合併症のリスクが高いため、早急に医療機関で診察を受けてください。
・強い便意があるのに出ない(腸閉塞の可能性)
腸閉塞の症状には腹痛、嘔吐、膨満感、そして便意が強いにもかかわらず排便ができないといったものがあります。これらの症状が現れた場合、放置すると腸の血流が悪化し腸が壊死(えし)する危険性もあります。
これらの症状は命に関わる緊急事態であることもあるため、症状が見られたら迷わず医療機関へ相談しましょう。

痔は早期に発見し、適切な治療を行うことで重症化を防ぐことができる(イメージ)
◇痔の悪化を防ぐためにできること
1. 早期発見・早期治療
痔は早期に発見し、適切な治療を行うことで重症化を防ぐことができます。出血や違和感を感じたら、恥ずかしがらずに医療機関を受診しましょう。
特に、出血が続く場合、腫れや痛みが強い場合には、自己判断せずに専門医の診断を受けることが必要です。早期であれば、簡単な薬物療法や生活習慣の改善で治ることが多いです。
2. 生活習慣の改善
食物繊維を多く含む野菜や果物を積極的に摂取し、便のかさを増やすことで便秘を防ぎます。水分補給も忘れずに行い、1日2リットルを目安に飲むことが推奨されています。
ウオーキングやストレッチなど、日常生活に簡単に取り入れられる運動を意識的に行い、血行を促進させましょう。特に、腹筋や骨盤底筋を意識したエクササイズが効果的です。
3. 定期的なセルフチェック
まずは、排便時の痛みや出血、肛門周辺の違和感を意識しましょう。これらの症状が見られた場合、すぐに専門医の診察を受けることが重要です。また、肛門周辺にしこりや腫れを感じた場合も、放置せずに医療機関を受診してください。
さらに、定期的に肛門の状態を鏡で確認することもお勧めです。自分の目で確認することで、普段気付かない異常に気付くことができるかもしれません。
◇まとめ
痔は、恥ずかしさから相談をためらってしまいがちですが、放置すると症状が悪化し、深刻な合併症を引き起こすリスクがあります。痛みや出血が強くなったり、場合によっては手術が必要になったりすることもあるため、早期発見・早期治療がとても重要です。違和感を覚えた段階で、ためらわずに医療機関へ相談することをお勧めします。
また、痔の再発を防ぐためには、生活習慣の見直しが欠かせません。食生活の改善や長時間同じ姿勢を避ける工夫、適度な運動など、日常生活でできる予防策は多くあります。さらに、定期的なセルフチェックを行うことで、小さな異変にも早く気付くことができ、症状の悪化を防ぐことにつながります。(了)

鈴木隆二医師
鈴木隆二(すずき・りゅうじ) 医療法人社団筑三会理事長、消化器外科専門医(筑波胃腸病院、千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック・健診プラザ)。聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター助教を経て、20年現理事長に就任。日本消化器内視鏡学会専門医、日本外科学会専門医、麻酔科標榜医、産業医、難病指定医。経営では医療DXに注視し、多数の取材・本を出版している。
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(2025/05/22 05:00)
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