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不正出血の原因と注意点
~体のサインに敏感になろう~ 【第3回】
生理時以外に性器から出血する不正出血は、決して見逃してはいけない体の変化の可能性があります。妊娠や病気のサインかもしれません。しっかりと自分の体のリズムを把握し、いつもと違う異変に敏感になることが大切です。
今回は不正出血の原因について詳しく解説します。重症化を防ぐためにも、一度でも不正出血があれば放置せず、迅速な受診を心掛けましょう。自分の体は自分が一番よく分かるはずです。不安な兆候に気付いたら、勇気を持って専門家に相談し、適切な対処を行いましょう。
自分の体の変化に注意を払い、不正出血の原因を探ることが大切だ(イメージ画像)
◇六つの原因
不正出血は生理の遅れや経血過多とは違います。起きたときは単なる生理不順だと軽く考えず、真剣に受け止める必要があります。落ち着いて、自分の体の小さな変化に注意を払い、原因を探っていきましょう。
体調の変化に気付く感度を高めることで、潜在的な病気のサインを見逃さずに済みます。出血の量や期間、その他の症状の有無などをしっかりと確認しましょう。
①妊娠
受精卵が子宮に着床する過程で軽い出血が見られることがあります。これは着床出血と呼ばれ、妊娠のサインの一つです。着床出血は通常の生理よりも出血量が少なく、多くの場合1、2日で止まります。
一方、異所性妊娠や流産の際には、かなり激しい不正出血が起こる可能性があります。異所性妊娠とは受精卵が子宮の外、例えば卵管内に着床してしまう状態です。この場合、激しい下腹部痛と大量の出血を伴います。
②炎症
細菌やウイルス、寄生虫などの病原体による感染症が原因で子宮内膜に炎症が起これば、不正出血が引き起こされる可能性があります。子宮内膜炎と呼ばれる疾患は、激しい下腹部痛や発熱、産後の悪露(おろ)増加など他の症状を伴うケースが多く見られます。
性行為感染症である淋菌(りんきん)やクラミジア、梅毒など、特定の病原体に起因する場合もあります。かつて「産後の肥立ちが悪い」と言われた子宮復古不全でも同様の症状が表れます。免疫力が低下している場合などは、日和見感染により容易に子宮内膜炎を発症する場合もありますし、最近は子宮内膜炎と不妊症が関係していることも分かってきています。
一方で、外傷が引き金となり炎症が起こる例も見られます。月経期間中のタンポン装着や性行為の際に、子宮頸部(けいぶ)を傷付けてしまうと、その部位が炎症を起こし不正出血につながります。
③ホルモンバランスの乱れ
女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンのバランスが崩れると、月経周期に異常を来し、不正出血が生じる可能性があります。
典型的なケースが機能性出血や過多月経などの月経異常です。機能性出血とは卵胞の非破裂周期による出血で、排卵の乱れやホルモンの分泌異常が原因と考えられています。一方、過多月経は生理出血量が過剰になる状態を指し、子宮内膜の異常増殖が一因とされています。
また、ホルモンバランスの大きな変化が起こる更年期には、不規則な出血を経験する女性が多くなります。更年期というとホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗)などの症状だけと思われていますが、30代後半から女性ホルモンの変化は始まっています。生理が順調だった人は初めての不正出血にびっくりしますが、実は更年期の最初の症状としては月経周期の乱れが多いのです。卵巣機能の低下に伴いホルモン分泌が不安定になるため、月経前の出血や無排卵出血などが起こりやすくなります。
閉経後に女性ホルモンが減少し、出血が起こる場合もあります。かつては萎縮性膣炎(ちつえん)とも言っていましたが、最近はGSM閉経関連泌尿生殖器症候群と称され、膣からの出血や性交痛、頻繁なぼうこう炎、血尿といった症状を伴います。閉経後でも、おりものが出たり出血したりすることがあります。人生100年時代の更年期は折り返し地点で、それ以降は女性ホルモンの少ない状態となるので、快適に過ごすためには効果的なホルモン補充療法なども知っておいてください。
④良性腫瘍
子宮筋腫やポリープなどの良性腫瘍も一定の割合で不正出血の原因になります。腫瘍の大きさや位置によっては出血量が多かったり持続したりします。
⑤悪性腫瘍
最悪の場合、不正出血の原因が悪性腫瘍である可能性もあります。30代に多い子宮頸がん、最近増加傾向にある閉経後の子宮体がん、早期発見が難しくスクリーニング検査方法も確立していない卵巣がん、高齢者でまれにある膣がんなどが代表的な病気です。がんの種類によって症状は異なりますが、持続的な出血やおりものに血が混ざるなどの不正出血が見られることがあります。
⑥低用量ピル
低用量ピルの服用を始めると、一時的にホルモンバランスが崩れ、不正出血が起こることがあります。この場合、ピルの種類を変更したりしながら、徐々に体内のホルモンバランスを整えていきます。長引く不正出血はピルの副作用として結構な頻度で起きるので、知っておくと不安にならずに済むでしょう。服用開始から数カ月は経過観察が必要ですが、長期にわたり出血が継続する場合は別の原因が考えられるので、医師に相談しましょう。
◇量・頻度・周期は? 変化見逃さない
出血の量、頻度、生理周期の変化に気を付けることが不正出血に気付く上で大切なポイントです。例えば、いつもより出血量が多い、生理がおかしい、日数が変わったなどの変化がある場合は要注意。長期にわたり過度の出血が続けば、貧血になる危険もあります。自分の体のリズムを知り、いつもと違う変化を見逃さないよう意識を高めましょう。
◇貧血に注意
2週間以上にわたり過多な出血が続く場合は、体内の血液が失われ貧血になる可能性があります。子宮筋腫など良性腫瘍による出血で症状が起こることもあるので注意しましょう。貧血がひどくなれば、めまいや動悸(どうき)、息切れなどの症状が出る場合があり、放置は危険です。
早期発見・早期治療が重症化を防ぐ(イメージ画像)
◇受診必要か検討を
月経周期以外で性器からの出血があれば、医師への相談をお勧めします。不正出血にはさまざまな原因があり、自己判断は避けた方が無難です。早期発見・早期治療により重症化を防げます。
ただ、1~2年ごとの定期的な婦人科検診をきちんと受けていて、数カ月以内の検診結果に問題がないなら、初めての不正出血で慌てて受診しなくてよい場合もあります。不正出血が短期間に2回、3回とある場合や鮮血で量が多い場合、おなかや腰の痛みも伴う場合は受診を考えましょう。体の変化に敏感になることは大切ですが、環境の変化や精神的なストレスなどに心当たりのある場合は、状況が落ち着くのを待ってから受診しても遅くはないと思われます。
いつもと違うサインを見逃さないよう気を付けつつ、普段から何でも相談できる婦人科のかかりつけ医を持っておくと安心です。(了)
沢岻美奈子(たくし・みなこ)
琉球大学医学部を卒業後、産婦人科医として25年以上の経歴を持つ。2013年1月、神戸市に女性スタッフだけで乳がん検診を行う沢岻美奈子女性医療クリニックを開院。院長として、乳がんにとどまらず、女性特有の病気の早期発見のための検診を数多く手掛ける。女性のヘルスリテラシー向上に向け、診察室での患者とのやりとりや女性医療の正しい知識をインスタグラムで毎週配信している。
日本産科婦人科学会専門医、女性医学学会認定医、マンモグラフィー読影認定医、乳腺超音波認定医、オーソモレキュラー認定医。漢方茶マイスター。
(2024/05/22 05:00)
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