伊藤壽一 医師 (いとうじゅいち)

京都大学医学部附属病院

京都府京都市左京区聖護院川原町54

  • 耳鼻咽喉科
  • 教授

耳鼻咽喉科

専門

めまい、メニエール病、突発性難聴、内耳障害、人工内耳

伊藤壽一

メニエール病、突発性難聴などの内耳障害を引き起こす病態について、臨床や研究を多数行う。人工内耳などの手術を行う他、再生医療を応用した内耳障害の治療に関する研究を進め、2010年には突発性難聴を再生医療で改善することに成功。内耳由来の幹細胞のクローン化、iPS 細胞などの内耳への移植を行い、内耳障害の回復に関する基礎研究を行っている。また、メニエール病などのめまいを起こす疾患に対して、厚生労働省の調査研究班班員として、病態のメカニズムの解明や治療方法の確立などにも努める。めまいについては「研究する余地が十分あり、新規治療法開発が急がれる。耳鼻咽喉科領域の中でも、まだまだ発展しなくてはいけない分野」という見解。

診療内容

めまいが起こる時期・どのような状態のめまいか・めまいの持続時間・他の付随する症状などについての問診、体平衡テスト・異常眼球運動の記録・聴力検査・レントゲンなどの画像検査などの検査を通して診断。
頸椎の変型・圧迫などによる椎骨脳底動脈不全症の場合、頸椎の牽引やカラーの装着などで症状が改善されることもある。投薬では各種抗めまい薬、血管拡張剤、ビタミン剤などを第一選択とし、必要に応じて自律神経調整剤、精神安定剤などを用いる。
めまいや難聴の新しい治療法がなかなか臨床応用できなかった理由のひとつに「障害部位である内耳に適格に薬を到達させる方法がなかったこと」が挙げられる。有効性が期待できる新しい薬が発見されても、患者の内耳に送り込むすべがなかったのだ。この問題を解決するために伊藤医師は、京都大学再生医学研究所の田畑泰彦教授と共同で、安全かつ有効な内耳薬物投与システムを開発。これは、ゼラチンでできたハイドロゲルという物質に内耳障害に対して有効と考えられる薬物をしみこませ、内耳の入り口にあたる正円窓という膜様の部位に置くという方法である。ハイドロゲルから薬がじわじわと溶け出して、内耳に入るという仕組み。難聴に対する有効な薬物として、インスリン様細胞成長因子1(成長障害や特殊な糖尿病などの治療に用いられている薬)を投与している。
なお、この治療方法は急性高度難聴(急に聞こえが悪くなり、これまで広く行われてきたステロイド治療の効果が全くない)患者を対象とした臨床試験として行われている。聞こえに関係する細胞が死んでしまう前に助ける治療であるため、完全に細胞が死んでしまってからでは効果が期待できない。よって、難聴が発症してから30日未満であることが参加条件のひとつ。臨床試験では、鼓膜切開を行い、薬を含むゲルを正円窓に置く。その後、4日間のみ入院し、以後5回の外来診察・検査を受診。大きな副作用は特にない。

医師プロフィール

1975年 京都大学医学部 卒業、京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
1976年 兵庫県立尼崎病院鼻咽喉科・頭頸部外科
1983年 京都大学大学院医学研究科 卒業、カリフォルニア大学神経内科助手
1985年 京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 講師
1990年 大津赤十字病院耳鼻咽喉科・気管食道科 部長
2000年 京都大学医学部附属病院・京都大学大学院医学研究科 教授