八橋弘 医師 (やつはしひろし)

国立病院機構 長崎医療センター

長崎県大村市久原2-1001-1

  • 臨床研究センター
  • センター長

消化器科 内科

専門

ウイルス肝炎、肝がん

八橋弘

ウイルス性肝炎治療のエキスパート。最先端の検査・治療を誇る同センターの肝臓病専門病棟は'90年以降入院した肝臓病患者の1万人を越えるデータベースを持つ。これをもとにB型・C型肝炎の診断と治療法を決定。八橋弘医師は25年間一貫して同センターに在籍し、経過の長い慢性肝炎についての診断治療には定評がある。発がんのリスクを考慮に入れ、無治療の場合の経過を意識しつつ、的確に治療方針を決めている。外来の3分の1がB型慢性疾患患者と他施設に比べ多いのもそのためである。

診療内容

新しい診断、治療法について
最近の数年間でC型肝炎もB型肝炎も、診断法、治療法ともに大きな進歩、飛躍がみられた。診断法に関しては、2009年、C型肝炎に対するインターフェロンの治療効果は、生まれた時から遺伝的に決められることも明らかとなり、血液検査だけでインターフェロンが効くタイプか、効きにくいタイプかを治療開始前に判別することも可能となった。当院では、原則、その検査をおこなった上で治療の導入、治療法を決定している。また治療法に関しては、2011年、C型肝炎治療の新しい抗ウイルス薬であるテラプレビル、またB型慢性肝炎に対してもペグインターフェロンが使えるようになった。テラプレビルはC型肝炎ウイルスに特異的に効く画期的な薬であるが、今後、副作用がさらに軽減された第2世代の抗ウイルス剤が使用可能となる。そして、数年以内に、インターフェロンを用いずに(インターフェロンフリー)、内服の抗ウイルス剤を組み合わせて、C型肝炎を安全かつ確実に治癒させる時がくる。インターフェロンフリーの治療法は、高齢のC型肝炎の患者や、インターフェロンの副作用などで、今までC型肝炎の治療をおこなうことができなかった患者でも、十分治療をおこなうことが可能である。当院では、これらの新薬の治験を多数例おこなっている。また、B型肝炎の最近の治療法もB型肝炎の診断基準となっているHBs抗原そのものを、各種治療法で早期に消失させる方法に向かい始めている。その代表的な治療薬がペグインターフェロンであり、そして数年以内にわが国でも使用できる見込みとなっているテノホビルという内服の抗ウイルス剤に、その期待が寄せられている。
新しい治療法が導入されるまでに
C型肝炎もB型肝炎も、今後数年以内に克服できる時が必ずやってくる。しかし、現在、開発段階にあるそれらの治療薬、治療法が自由に使えるようになるまで、今、どのようにすべきなのか、考えることが必要である。当院では、C型肝炎の治療でリバビリンとペグインターフェロンの併用療法が無効だった方、高齢や合併症の為に併用療法が受けられない方、肝がんの発生リスクが高い方、一度肝がんができるも再発の可能性が高い方を対象にインターフェロンやペグインターフェロンを少量、長期間に渡って治療する方法を多数例導入している。この治療法では、ウイルスを排除することを目的とせず、病気を進展させない(進展抑制)、がんを発生させない(がんの芽を摘む)ことを目標とする。治療効果の指標としては、1)GPT(ALT)値が低下するか、2)発がんリスクマーカーであるAFP値が低下するか、どうかで治療効果を評価する。GPT(ALT)値が低下しない、正常化しない場合でも、多くの例でAFP値が低下することから、インターフェロンが強力に肝臓の細胞に働きかけて肝がんの発生を抑えていると考えている。従来型のインターフェロン(スミフェロン)では、通常使用量の半分から四分の一を、週2~3回投与する。ペグインターフェロン(ペガシス)も半分から四分の一量を2週間―4週間に1回投与する。投与量も少なく、投与間隔も空くことから、副作用は軽微となり、安全性も高まる。また患者の薬剤費用の負担も軽減される。ウイルス排除を治療目的としないことから、治療を続けることに疲れた場合や、1~2週間の旅行に出かける場合には、躊躇することなく治療を中止することが、この治療法のこつである。体調が戻り、旅行から戻った場合には治療を再開始する。また従来型のインターフェロンは、患者自身で自宅にて注射を投与することが可能(在宅自己注射)となっている。年余に渡って治療をおこなうことで、進展抑制、発がん抑止の治療効果が期待できる。

医師プロフィール

1984年3月 長崎大学医学部 卒業
1988年10月 国立病院長崎医療センター勤務
1992年3月 長崎大学学位修得
1997年4月 国立病院長崎医療センター臨床研究部ウイルス研究室室長
2000年10月 国立病院長崎医療センター臨床研究部長
2002年10月 国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター治療研究部長
2004年4月 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学専攻肝臓病学講座教授
2012年4月 国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター長