石黒直樹 医師 (いしぐろなおき)

名古屋大学医学部附属病院

愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65

  • 整形外科
  • 病院長
  • 教授

整形外科 外科 リウマチ科

専門

リウマチ・関節外科、軟骨代謝

石黒直樹

関節リウマチは、進行性かつ慢性に経過して最後には機能障害をもたらす疾患。しかし、今この概念は大きく変貌している。全てとは行かないまでも大部分の患者では病勢の進行を限りなく遅延させることができるようになってきた。つまり「病気の症状が、一時的あるいは継続的に軽減した状態、または見かけ上消滅した状態」いわゆる寛解を達成できるようになったのだ。この「寛解」が現実の目標と石黒医師は言う。“寛解を目指す治療”代表される概念は非常に重要な意味を持ちます。ともすれば今までの治療では具体的な治療目標を持たず“以前より良くなった”という相対的尺度で疾患活動性を評価していました。どれほど良くなったのか?そして今の患者の疾患活動性は標準に照らし併せてどの程度なのか?それは将来に大きな障害をもたらさない程度に低い疾患の活動性状態なのか?それに答える尺度を持たずに治療していたのです。これでは厳密な治療が行える訳もなく、高い治療目標の設定も困難でした。治療目標の設定と共に標準化された尺度を持ち、必要な治療を実践することが重要であり、それ無しには治療目標の達成は困難です。我々はこの考えの基に治療を行っています」(石黒医師)
関節リウマチでは寛解という治療目標を掲げ、それを実現するように疾患活動性を標準化された指標で評価し厳密な管理を行うことにより、積極的治療を展開することを理想としている。従来の抗リウマチ薬(DMARDs)や、生物学的製剤を含む全ての治療薬がこの目標を達成するために「必要に応じて選択するようにしています。必要な患者に必要な時に適切な医療が提供すること、これが高い治療目標を達成する方法とおもいます」

診療内容

関節リウマチ(RA)治療では、1)適切な薬物治療、2)リハビリテーションの実施、3)正しい病気に対する知識の習得(学習)、4)生活の質(QOL)向上を目指した手術等が重要。現在RAの治療は治療目標を持つことが大切である。必ずここまでは良くなるのだという強い意志が必要だと石黒医師は言う。
具体的には「寛解または低疾患活動性」が目標。そしてそれを実現するための方策に「Tight control 」と言う言葉が有るが、実診療ではガイドライン等を参考にして、我が国では関節リウマチ治療における第一選択薬はイグラチモド(以下、サラゾピリン(以下SASP)、ブシラミン(以下BUC)そしてメトトレキサート(以下MTX)が使用されている。この中でMTXが一番しっかりとした治療効果、継続性が過去の研究から明らかとされている。第一選択薬の抗リウマチ薬治療の効果が不十分な場合は、2つ選択肢があり、抗リウマチ薬の追加による併用療法と薬剤変更による単独治療である。MTXと生物学的製剤の組み合わせを除く併用療法についてはいまなお確たるEBMはない。
個人的には典型的なリウマチ症状の患者ではMTX以外のDMARDsの併用療法によって効果判定に時間を費やすよりはMTX未使用例では薬剤変更によりEBMの点で勝るMTX治療を開始すべきだ。MTXのみで寛解(最低限では低疾患活動性)が得られればひとまずの目標は達成。あとはX評価などで骨破壊の進行が無いことを押さえていけば良いと思う。もし、不幸にも克つ破壊が進行するようなことがあれば、次には生物学的製剤などの使用となる。ここでもMTX使用が大きな鍵となる。一般的にTNF阻害薬はMTXとの併用により効果が補強される傾向にある。骨破壊の進行程度が早く、疾患活動性が高い症例などでは治療経過の中ではインフリキシマブ(MTXとの併用が必要)や、アダリムマブ、エタネルセプト(共に併用下での効果増強が期待できる)を使用する可能性が考えられる。「こういったことを考えると当初から今後の治療に繋がるMTXの使用を優先すべきかも知れません。勿論副作用や、患者さんの希望、合併症などの創が追う的な判断が必要です。覚えておいて頂きたいのは生物学的製剤の寛解導入率が他の治療法に比較して高いことです。特に、早期例では導入率が高い傾向(途中で生物学的製剤を止められるという例も存在)が見られます。以上のことから考えると同じ必要になるのなら、必要な症例には早期から生物学的製剤が選択されるべきという結論にもなります。これらのことを十二分に考え、一人一人の間伽ニーズに適合した治療の選択が必要です。大切なのは“良くなりすぎて困ることはない”と言う事実です。早期からの積極的治療介入が治療成功の秘訣です。繰り返しになりますが、副作用のチェック、合併症の評価などは充分にする必要があります。しかし、過大にそれを怖れていれば症状が進行して行く事を忘れてはいけません」(石黒医師)
大切なのは、1)早期での確実な診断、2)標準化された方法での疾患活動性評価、3)積極的かつ確実な治療選択だ。
同院では、リウマチ診療をリウマチ科が行っている。中心はリウマチ専門医である整形外科医である。内科的な合併症を持つ患者が多いので、呼吸器内科、腎臓内科とは定期的に検討会を開催している。呼吸器、腎臓内科などとの連携も十分に取れており合併症、副作用についても十分に対応できる体制は、患者にとって大きな安心を与える医療機関として、十分な他科との診療連携体制で臨んでいる。
関節炎の結果生じる痛み、関節のはれ、筋力の低下、関節可動性の損失など、機能障害の原因に対して最小限に障害をとどめるためには初期からリハビリテーションを行う必要がある。でも、こうした努力や十分な薬物療法を行っても、時には関節の破壊が進行して手術的な治療が必要となることがある。関節の障害が悪化してしまった場合や、悪化が予想される場合には手術治療が必要となり、障害が起こった場合や起こりそうな場合には手術治療のタイミングを考えることと、手術の種類の選択が大切。いたずらに我慢を重ねることは関節の破壊を進行させて、本人の苦痛を増悪させるばかりか、手術治療を困難なものにしてしまう。診療について、ここではリウマチ医は整形外科専門医を兼ねているので、関節の変形などの場合には手術を担当医が行う。手術には、増殖した滑膜(かつまく)を取り除く「滑膜切除術」や、破壊された軟骨・骨を人工関節に置き換える「人工関節置換術」がある。リウマチ外来での担当医が手術担当となり、術後も再び外来で診療に当たる。手術については低侵襲かつ正確な手術を目指している。脊椎手術などでは副主治医として入院中のリウマチ症状管理に当たる。同科の関節リウマチの登録患者数約1,000例(RA患者年間手術数100例、手術紹介患者含む)、この内、RA患者では人工関節症例が年間60例程度その他は、生物学的製剤使用症例はのべ400例となっている。また、日々進歩しているリウマチ治療の情報発信のために、リウマチネットワークを立ち上げ、勉強会、市民公開講座を開催し、関節リウマチに対する医療に貢献している。
同院は、血友病関節症に取り組む数少ない施設のうちのひとつであり、血液内科との連携で安全に手術を行っている。血友病関節症の手術例は年間3~5例である。

医師プロフィール

1980年 名古屋大学医学部 卒業
1990年 医学博士号取得
1990年 米国シカゴ ラッシュ大学留学
1995年 名古屋大学医学部整形外科講師
2000年 名古屋大学大学院医学研究科機能構築医学専攻、運動・形態外科学講座リウマチ学助教授
2001年 名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学専攻、運動・形態外科学講座整形外科学教授
2007年 名古屋大学医学部附属病院副病院長(兼務)
2013年 名古屋大学医学部附属病院病院長(兼務)、名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻、運動・形態外科学講座整形外科学教授(専攻名変更)
現在に至る

「膠原病・リウマチ」を専門とする医師