加藤天美 医師 (かとうあまみ)

近畿大学医学部附属病院

大阪府大阪狭山市大野東377-2

  • 脳神経外科
  • 教授、診療部長

脳神経外科 外科

専門

脳腫瘍外科、機能系脳神経外科(難治性てんかん手術、不随意運動手術)、脳神経外科手術法開発

加藤天美

加藤天美医師は、脳腫瘍外科、機能的脳神経外科(難治性てんかん手術、不随意運動手術)などを専門とし、日本てんかん学会の理事も務める。また、厚生労働省の“てんかん有病率等に関する疫学研究及び診療実態の分析と治療 体制の整備に対する研究班”にも参加。同科は、日本てんかん学会専門医制度 に基づく研修施設であり、難治性てんかんに対して頚部の迷走神経に 電気刺激を与え、てんかん発作を減少させる“迷走神経刺激療法”の施行施設 としても認定されている。

診療内容

てんかんとは、脳の神経細胞が異常に興奮し、それが広がって、けいれん発作や欠神発作など、さまざまな“(てんかん)発作”を繰り返すものである。特に、脳の一部分が異常活動し、それが引金となっててんかん発作が起こる場合、その部分を“てんかん焦点”と呼ぶ。てんかんは最も頻度が高い神経疾患のひとつで、生涯を通じて1回でも発作を経験する人は人口の約10%、2回以上は人口の約4%とされている。また、頻回に発作があり、“てんかん”と診断される患者はおよそ1%、100人に1人とされ、したがって、国内には約100万人のてんかん患者がいることになる。
発作では、神経細胞の興奮の結果、体の強直やけいれん、脱力、異常感覚、記憶障害などの症状を来たし、脳全体に発作が広がるともうろう状態となり、ついで意識を失う。これは、数秒から数分続く。発作後に麻痺など症状が残ることもあるが、回復すると平常通りの生活に戻ることができる。発作が止まらず、30分以上続くとき“てんかん重積”といい、命にかかわることもある。発作がおおむね5分以上続くときは“てんかん重積”となる可能性があるので、直ちに救急受診をすることが必要になる。
てんかんの診断:発作症状と、それに対応する脳波異常があればてんかんと診断される。最近は脳波のほかに、脳磁図や脳血流検査、PET検査など、総合的に診断されるようになってきた。てんかん焦点には、脳形成異常、脳腫瘍、外傷、血管障害、脳炎など脳の器質病変があり、これらは手術で治療できるため、CTやMRIなど脳画像検査を1度は受けることが勧められる。
てんかんの薬物治療:てんかん治療の原則は、抗てんかん薬による薬物治療である。てんかん患者の60%は薬物治療で発作が消失し、約20%は発作が1/4以下に減少する。てんかんの発作型あるいは病態に応じた薬があり、正しい診断に基づいて最適な抗てんかん薬によって治療を受けることが必要。しかし、薬物治療を受けるてんかん患者の約20%は発作が抑えられず、慢性化する難治性てんかんとなる
難治性てんかんと脳機能障害:難治性てんかんの多くでは、脳機能障害を伴う。特に小児の難治性てんかんは脳の発達に重大な影響を及ぼす。約1/3の小児患者では精神・発育・学習の遅れや行動異常が生じ、人生に与える影響ははかり知れない。成人でも就労や運転、妊娠など社会生活においてさまざまな制限が生じ、生活の質が損なわれる。また、薬の副作用や定期的に服用することの煩わしさも看過できない。
難治性てんかんの外科治療:近年、外科治療の効果と安全性が向上し、有力なてんかん治療手段として認識されつつある。手術治療が有効なてんかんとして、内側側頭葉てんかん、皮質形成異常、脳腫瘍、脳萎縮や瘢痕、片側巨脳症、スタージ・ウエーバー症候群、結節性硬化症、視床下部過誤腫、突然転倒して重度の外傷や事故をきたす危険な発作などが挙げられる。
正しい診断のもと行われた手術成績は非常に優れており、約70%以上の患者で発作が消失あるいは激減する。特に、小児では発作消失とともに、往々にして精神発育遅滞が回復する。従って、発作によって日常生活への支障が大きい場合には外科治療を検討したほうがよい。最近の手術成績は非常に良好であり、難治性てんかん患者のうち10~20%には手術が有効と考えられている。
迷走神経刺激治療:同院では、てんかんの外科手術のひとつとして、迷走神経刺激治療を実施。これは、頚部の迷走神経に電気刺激を与え、てんかん発作を減少させる治療で、VNS(Vagus nerve stimulation)とも呼ばれる。
この治療法では、電気刺激発生装置(ジェネレーター)を胸部に埋め込み、そこからリード線を延ばして頚部の迷走神経に巻付ける手術が必要になる。迷走神経は脳の深部を活性化する働きがあり、手術は心臓ペースメーカーと原理がよく似ているため、“脳のペースメーカー”ともたとえられる。国内では2010年7月より使用可能となった。この治療は所定の研修を修了したてんかんの専門医によって行われる。
対象は、成人・小児の難治性てんかん全般。ただし、焦点切除など、開頭によるてんかん手術のほうが効くと考えられる患者には、開頭手術を優先する。この治療法は、てんかんのなかでも、全般てんかんより部分てんかんにより効果が高い。
約2年間刺激療法を続けたとき、約半数の患者で発作頻度が半分以上減少する。また、刺激療法を継続するほど発作がだんだん抑えられるようになる。さらに、発作が薬で抑えられない時は、早くこの治療を開始するほうが、効果が大きいことも分かっている。しかし、抗てんかん薬と同様に、発作が完全になくなることはまれである。発作の減少とは別に、治療の効果として、注意力、集中力、不安、記憶機能、言語機能などの改善が約2/3の患者に認められている。

医師プロフィール

1979年3月 大阪大学医学部卒業
1982年 モントリオール神経研究所研究員
1985年 大阪大学大学院医学研究科卒業
1985年 大阪厚生年金病院 医長
1991年 大阪大学医学部 助手・大阪労災病院 脳神経外科部長
2001年 大阪大学助教授大学院医学系研究科
2005年 大阪大学医学部附属病院 病院教授(併任)
2007年 近畿大学医学部 教授
2008年 自然科学研究機構 生理学研究所多次元共同脳科学推進センター客員教授(委嘱)

「てんかん」を専門とする医師