中里信和 医師 (なかさとのぶかず)

東北大学病院

宮城県仙台市青葉区星陵町1-1

  • てんかん科
  • 科長、教授

脳神経外科 外科

専門

てんかん、脳波、脳磁図

中里信和

てんかん専門医・脳神経外科専門医。患者や家族からの病歴聴取に際してはじっくり時間をかけて耳を傾けることをモットーとし、外来だけでなく、必要に応じて入院検査も取り入れた正確な診断を心がけている。てんかんの医学的問題にとどまらず、その周辺にある社会的問題にも着目し、患者の悩み解消まで広く視野に入れた活動を行う。日本の大学病院では初となる「てんかん科」の設立に尽力してきたほか、地域との連携を早くから重視し、同大学てんかんセンター設立に向けても意欲的である。脳波検査の精度を高めるための最新手法の開発にも携わり、1988年同大学では中里医師を中心として脳磁図(脳の電流をその周囲の磁場として測定する検査)研究を開始し、世界のトップレベルの研究を牽引してきたことでも知られる。

診療内容

てんかんは有病率約1%というありふれた病気で、日本の患者数は100万人を超える。脳の一部が異常に興奮すると発作が起き、おかしな刺激を感じたり、おかしな考えをしたり、妙な記憶がよみがえったり、おかしな指令で体の一部が勝手に動いたりするという。
中里医師はてんかん治療の現状について次のように話す。「ごくありふれた病気でありながら、てんかんは不治の病と誤解されがちです。てんかんと聞くと多くの人は戸惑いますが、あきらめる必要はまったくありません。しかし専門医による正しい診断と投薬治療で7~8割の患者さんは普通の方と変わらない生活が送れるはずですが、現実には不完全な治療のために悩みをかかえたまま生活するケースが少なくないのが現状です」
同院てんかん科は、2010年3月に誕生した診療科である。欧米では地域ごとに大規模病院にてんかんセンターが設置されているのが通常だが、日本でてんかん科をもつ大学病院は同院だけである。同大学が“日本の脳波学発祥の地”と呼ばれているのも納得できよう。
同科は特殊な外来診療方針をとっており、同大学てんかんセンター(仮称)の設立に向け、関連各科の「てんかん専門外来」と、東北地方の関連拠点病院における「てんかん専門外来」の診療を行う点が特徴だ。同科での診療に際し「かかりつけ医からの予約、紹介状、家族の付き添い、この3つが必須条件です」と中里医師は語る。予約は、紹介元の医師から同院地域医療連携センターへのFAX・電話により成立する。紹介状はすぐ医師の元に届き、実際の受診(2~3か月先)よりも前に前医と連絡をとりあうなどして、外来診察を経ずに入院予約を行うこともあるという。
てんかん診断にあたり、第一歩は詳細な病歴聴取だと中里医師は述べる。「初診では1人1時間をかけて詳しい病歴聴取を行います。その際、医師が受け身で話を聞くだけでは不完全で、発作症状を予測しながら「このようなおかしな感覚が突然、繰り返し出ることはありませんか」と時間をかけて尋ねていきます。なお、てんかん発作の瞬間の様子は、本人は把握できていないことがほとんどです。目撃者の情報を正確に把握するため、そして生活指導を徹底するためにも、初診時は家族の同席が欠かせません」
病歴聴取とあわせて重要なのが脳波検査である。「なかには病歴と脳波所見だけで病型が決まり、薬を選択できる場合もあります。ただし脳波を過信してはいけません。脳波が正常でも薬の継続が必要な患者は少なくありません」(中里医師)
一方、外来診察を繰り返しても正しい診断に至らないこともある。これに対し同院では2010年よりビデオ脳波モニタリング装置を7台導入し「ビデオ脳波モニタリング検査」を開始した。これは約2週間の入院中に脳波とビデオで長時間観察しながら、発作をとらえて診断の精度を上げるものだ。月曜か火曜に入院し、次週の土曜に退院という計12~13日の入院を要する。最初の3泊4日はビデオ脳波モニタリング検査を行うため家族の付添を必要とし、必要に応じて減薬を行う場合もある。この検査は、てんかんなのか、てんかん以外の疾患なのかを根本的に診断する上でも役立つという。(これが終われば家族の付添は不要となる)
検査結果は症例検討会を経て患者・家族に説明される。その後の薬物治療や外科治療は患者個々に応じて組まれ、同院外来もしくは紹介元医で治療が継続される。「当科はかかりつけ医のような一次診療や、神経系の専門医による二次診療ではなく、三次診療という位置づけです。この手順を経ずに三次診療へスキップすると初診の患者さんが集中し、本来の機能が果たせなくなってしまいます。そのため、診断後に治療方針が明確になれば、なるべく早くかかりつけ医に逆紹介することも考えています」(中里医師)
さらに、ハイビジョンテレビによる遠隔会議システムを用いた「遠隔てんかん外来」も同科の特徴の一つだ。これは東日本大震災を機に、気仙沼市立病院との間で始まったものである。使用する機器は、復興支援のために米国 Arkansas 大学のチームから無償貸与された。「遠隔てんかん外来は被災地を結ぶ活動としてスタートしましたが、いずれは複数の病院と連携したいと考えています。片道の移動だけで数時間かかる地域の患者さんには大きな助けとなっています」(中里医師)
中里医師、そして同科の治療方針は、まず「一人で診ないこと」だという。「どんな名医も誤診をしますし、どんな名医も専門領域と非専門領域があります。てんかんの患者さんの悩みは多岐にわたるので、チームで診療するのがベストです。そして二つ目の方針は“発作診ずして、てんかん診るな”。外来で発作の話を聞くだけでは正しい診断ができません。いたずらに外来での薬調整を繰り返すことなく、入院してビデオ脳波検査を行い、正しい診断を得ることが大切だと考えています」

医師プロフィール

1984年3月 東北大学医学部医学科 卒業
1984年 東北大学医学部脳神経外科 研修医・医員
1988年 東北大学医学部助手(脳神経外科)
1989年 University of California, Los Angeles (UCLA) 研究員
1992年 財団法人広南会広南病院脳神経外科 医長
1996年 東北大学医学部助手(脳神経外科)
2000年 財団法人広南会広南病院臨床研究部長
2008年 財団法人広南会広南病院副院長
2010年 東北大学大学院医学系研究科教授(運動機能再建学分野)、東北大学加齢医学研究所教授(神経電磁気生理学分野/兼任)、東北大学病院てんかん科科長(兼任)
2011年 東北大学大学院医学系研究科教授(てんかん学分野に改名)

「てんかん」を専門とする医師