アデノイド増殖症〔あでのいどぞうしょくしょう〕 家庭の医学

 幼児期に大きく中学生ごろに小さくなっていく、鼻とのどと耳管(じかん)が交差する、のどのてっぺんの上咽頭(じょういんとう)にある扁桃がアデノイドです。したがって、アデノイドが大きくなれば、鼻からの呼吸ができなくなり、口呼吸をするようになります。このため、エアコンや空気清浄機としての鼻の機能が使えなくなり、かぜをひきやすくなります。鼻汁も奥にたまりやすく、鼻炎や副鼻腔(ふくびくう)炎の原因になります。耳管も閉塞するため中耳炎になりやすく、聞こえがわるくなっていることもあります。耳管の閉鎖は、中耳炎がなくてもエレベーターや飛行機で気圧が急激に変化したときに感じる状態で、アデノイドがはれているときは、つばを飲み込んでも改善しません。
 幼児期の子どもで、鼻から呼吸ができなくなりいつも口をあけていると、アデノイド顔貌(がんぼう)といって、顔の筋肉がしまりがなく、くちびるも厚くめくれあがってきます。また、欧米では下あごの発達がわるくなるといわれ、歯科矯正の適応になる場合もあります。
 アデノイドは耳、鼻、のどの中心で、その交差点にあたる上咽頭に位置します。大人でもかぜをひいたり、口をあけて寝たとき乾いて痛く感じる場所がここで、そこの炎症は耳鼻咽喉科が扱うすべての症状が出ます。耳鼻咽喉科の医師が、時に痛いにもかかわらずあえてここに薬を塗るのはそのためです。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCRなどの検体をとる場所です。
 通院処置で改善しない場合や、滲出(しんしゅつ)性中耳炎やいびきの原因の場合、手術の適応になります。
 通院治療は急性炎症の場合、口の中から綿棒でアデノイドに複合ヨードグリセリンなどを塗り、炎症をとります。はじめは出血と激しい痛みがありますが、徐々に出血と痛みは消失していきます。手術は満3歳以上、体重では15kg以上におこなうのが一般的です。局所治療も含め医師によりさまざまな方針がありますが、急性期に手術をおこなうことはありません。

(執筆・監修:独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 人工臓器・機器開発研究部長 角田 晃一
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