扁桃周囲膿瘍〔へんとうしゅういのうよう〕 家庭の医学

 口の中の扁桃の炎症が急激にその周囲にひろがり、多くは激しい痛みと38℃以上の高熱を伴い、ものが飲み込みにくくなります。しゃべりづらくなったり、口があけられなくなる開口障害が出たりします。この周囲は、脳にいく内頸動脈(ないけいどうみゃく)や脳からきた脳神経がたくさん通っていて、これらの炎症や圧迫症状も起こす場合があります。さらに放置すると、このすきま(副咽頭間隙)に膿瘍を形成し心臓と肺の間(縦隔)までひろがり、さらに重篤な病態をひき起こします。喉頭浮腫、急性喉頭蓋炎と同様で急激に悪化します。呼吸苦がなくても、早めに大きな病院を受診してください。


[治療]
 痛いほうのくびを上にして、くびの外から冷やしてください。抗菌薬の投与や点滴、必要に応じて切開や針で穿刺(せんし)をし、たまったうみを出します。一度扁桃周囲膿瘍を起こした場合、扁桃の摘出手術をしたほうがよいとされています。一般に炎症の激しいときの手術は出血、痛みも強く出ます。手術の時期・適応は医師の指示に従いましょう。

(執筆・監修:独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 人工臓器・機器開発研究部長 角田 晃一
医師を探す