のどの異物・食道異物〔のどのいぶつ・しょくどういぶつ〕
のどの異物には、魚の骨やもちなどの食べ物、コイン、玩具の部品、義歯(入れ歯)、電池などさまざまなものが原因となります。
魚の骨がひっかかった場合は、その後食事で飲み込むたびにチクッと痛みます。扁桃の裏側に刺さることが多いようです。放置すると感染を起こして、重篤な状態になることもあります。ごはんを丸のみするなどして飲み下そうとすることは絶対に避けてください。かえって奥に突き刺さることがあります。くびがはれてきたり、呼吸苦や激しい出血が出現した場合は、ただちに大きな病院にかかりましょう。
また、薬の周囲のアルミやプラスチックをそのまま飲み込んでしまうPTP(press through package)異物も多くみられます。薬は一度に急いでのまずに、確認しつつ落ち着いて集中してのみましょう。
異物の摘出は、局所麻酔や全身麻酔による内視鏡摘出術や頸部(けいぶ)外切開による摘出の場合もあります。ただちに禁飲食とし、最後に食事した時間を覚えておいてください。いざ緊急手術の場合に重要です。
■乳幼児の場合
乳幼児が目を離したすきに、おもちゃの部品やコインを飲み込んでしまう場合がいちばん多く、本人への確認もむずかしいことが多いです。子どもから目を離さないことがいちばんですが、突然子どもの呼吸が苦しそうになったり、ゲーゲーし始めておさまらない場合、のど、気管、食道の異物を考え、飲み込んだ可能性のあるものを確認してください。子どもは口に入れたらなんでも飲み込もうとします。また鼻、口、耳など穴があれば物を入れたがると思ってください。
鼻の異物がのどに回ることもあります。特にボタン電池を飲み込んだ場合は、胃などの粘膜に重篤な変化を起こし、ただちに摘出が必要な場合があります。そのときの状況を周囲に確認し、その場にあれば、考えられる異物と同様のものを持参して、ただちに受診しましょう。
乳幼児に限りませんが歯ブラシや箸でのどを突いた場合、必ず破片の有無を確認し、折れてのどに残っていれば、必ずもう一方の破片と可能ならそれと同様の、できれば完全に同じものをもってきてください。これらは、本人だけでは注意がむずかしい場合もあり、日常的に家族全体で注意をはらい、日ごろからお部屋を掃除、整頓、整理しその予防をすることも大切なことかもしれません。
■高齢者の場合
世界一の長寿国であるわが国では、同時に認知症の高齢者もふえています。このため異物への配慮は重要性を増しています。日本人独自の異物としてもちがあります。もちを食べるときは一度にほおばらずに、少しずつ味わい着実に嚥下(えんげ)するよう注意しましょう。もちの場合、とっさに「掃除機で吸い取って助かった」という話をまれに聞きます。救急でくる、もちをのどにつまらせた人の多くはすでに手遅れの場合が多く、窒息した場合、掃除機をためすのもよいかもしれません。ただ、うまく取れてもそのあとでのどに激しい炎症、傷や破片が残ります。念のためにうまく取れた場合でも一度医師に相談してください。
同様に、欧米ではステーキの塊を飲み込んで引っかけることがあり、近年日本でも起こりうる病態です。また、認知症などの場合、過去に紛失した入れ歯が実はのどに引っかかっていたという事例もあります。
いずれにしても、若いときとくらべ、咀嚼(そしゃく)嚥下能力は低下しています。嚥下をするたびに、くびにある「のどぼとけ」をもち上げて(喉頭の挙上)、気道にふたをしないと誤嚥しやすくなります。あごを引いてくびを前屈させることで、喉頭の挙上を代用し嚥下しやすくなります。水分をとるときは、ストローを使うのもよいでしょう。食べ物は細かく小さくし、しっかり咀嚼して、一気に飲み込まずに、適度の水分を加えると嚥下しやすくなります。とろみをつける方法もありますが、何でもとろみをつければいいとは限りません。咀嚼や嚥下の機能などについて担当の先生とよく相談しましょう。
(執筆・監修:独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 人工臓器・機器開発研究部長 角田 晃一)
魚の骨がひっかかった場合は、その後食事で飲み込むたびにチクッと痛みます。扁桃の裏側に刺さることが多いようです。放置すると感染を起こして、重篤な状態になることもあります。ごはんを丸のみするなどして飲み下そうとすることは絶対に避けてください。かえって奥に突き刺さることがあります。くびがはれてきたり、呼吸苦や激しい出血が出現した場合は、ただちに大きな病院にかかりましょう。
また、薬の周囲のアルミやプラスチックをそのまま飲み込んでしまうPTP(press through package)異物も多くみられます。薬は一度に急いでのまずに、確認しつつ落ち着いて集中してのみましょう。
異物の摘出は、局所麻酔や全身麻酔による内視鏡摘出術や頸部(けいぶ)外切開による摘出の場合もあります。ただちに禁飲食とし、最後に食事した時間を覚えておいてください。いざ緊急手術の場合に重要です。
■乳幼児の場合
乳幼児が目を離したすきに、おもちゃの部品やコインを飲み込んでしまう場合がいちばん多く、本人への確認もむずかしいことが多いです。子どもから目を離さないことがいちばんですが、突然子どもの呼吸が苦しそうになったり、ゲーゲーし始めておさまらない場合、のど、気管、食道の異物を考え、飲み込んだ可能性のあるものを確認してください。子どもは口に入れたらなんでも飲み込もうとします。また鼻、口、耳など穴があれば物を入れたがると思ってください。
鼻の異物がのどに回ることもあります。特にボタン電池を飲み込んだ場合は、胃などの粘膜に重篤な変化を起こし、ただちに摘出が必要な場合があります。そのときの状況を周囲に確認し、その場にあれば、考えられる異物と同様のものを持参して、ただちに受診しましょう。
乳幼児に限りませんが歯ブラシや箸でのどを突いた場合、必ず破片の有無を確認し、折れてのどに残っていれば、必ずもう一方の破片と可能ならそれと同様の、できれば完全に同じものをもってきてください。これらは、本人だけでは注意がむずかしい場合もあり、日常的に家族全体で注意をはらい、日ごろからお部屋を掃除、整頓、整理しその予防をすることも大切なことかもしれません。
■高齢者の場合
世界一の長寿国であるわが国では、同時に認知症の高齢者もふえています。このため異物への配慮は重要性を増しています。日本人独自の異物としてもちがあります。もちを食べるときは一度にほおばらずに、少しずつ味わい着実に嚥下(えんげ)するよう注意しましょう。もちの場合、とっさに「掃除機で吸い取って助かった」という話をまれに聞きます。救急でくる、もちをのどにつまらせた人の多くはすでに手遅れの場合が多く、窒息した場合、掃除機をためすのもよいかもしれません。ただ、うまく取れてもそのあとでのどに激しい炎症、傷や破片が残ります。念のためにうまく取れた場合でも一度医師に相談してください。
同様に、欧米ではステーキの塊を飲み込んで引っかけることがあり、近年日本でも起こりうる病態です。また、認知症などの場合、過去に紛失した入れ歯が実はのどに引っかかっていたという事例もあります。
いずれにしても、若いときとくらべ、咀嚼(そしゃく)嚥下能力は低下しています。嚥下をするたびに、くびにある「のどぼとけ」をもち上げて(喉頭の挙上)、気道にふたをしないと誤嚥しやすくなります。あごを引いてくびを前屈させることで、喉頭の挙上を代用し嚥下しやすくなります。水分をとるときは、ストローを使うのもよいでしょう。食べ物は細かく小さくし、しっかり咀嚼して、一気に飲み込まずに、適度の水分を加えると嚥下しやすくなります。とろみをつける方法もありますが、何でもとろみをつければいいとは限りません。咀嚼や嚥下の機能などについて担当の先生とよく相談しましょう。
(執筆・監修:独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 人工臓器・機器開発研究部長 角田 晃一)