反回神経まひ(喉頭まひ)〔はんかいしんけいまひ(こうとうまひ)〕

 声帯を開いたり閉じたり動かす喉頭の筋肉に指令を出す、脳から出て末梢までのびる神経(反回神経)のまひの総称です。脳から出た指令は肺や心臓の大血管のある縦隔で180°ターンして喉頭にとどきます。したがって、脳はもちろん、心臓、大血管など縦隔の病変や肺がん、食道がん、喉頭や甲状腺の悪性を含む腫瘍の初発症状の場合もあります。また、それらの手術に伴う偶発症の場合もあります。
 多くは左右いずれかのまひで、症状は声帯溝症や声帯萎縮症同様の声門閉鎖不全ですが、声帯が動かないのと筋肉の萎縮を伴うため、その程度は重症です。

[検査][治療]
 第一に、原因の検索とそれに対する治療です。かぜなどのウイルスが原因の場合が多いですが、脳から出た反回神経が喉頭に至るまでの経路のどこに原因となる障害があるのかを調べます。脳全体の血管障害や腫瘍、咽頭、喉頭の病変、頸(けい)部や甲状腺の腫瘍やリンパ節の検査、肺、食道、心臓とその周囲の縦隔の大きな血管などの病変を、CTやMRI、X線検査、超音波(エコー)検査、PETなどで調べます。
 あきらかな原因が見つからない場合、原因不明の反回神経まひとして手術療法の適応となります。あきらかな原因が見つかった場合はその治療を優先し、声の治療はそのコントロールが落ち着いてからです。
 声の治療は、あきらかな炎症がないかぎり、どんどんしゃべってもらい健康な声帯をまひ側の分も動かすように(代償)訓練します。それでも声門閉鎖不全が改善しない場合、手術を考えます。したがって、訓練期間も含め手術で切断した場合で声がかれてから6カ月、そうでない場合は自然回復の可能性もあり6~18カ月ようすをみてからの音声外科手術をおこなうのが一般的です。
 手術は軽度のものは声帯内自家側頭筋膜移植、中等度以上の場合は披裂(ひれつ)軟骨内転術や甲状軟骨形成術をおこない、症例によりそれらを組み合わせたり、注入療法を追加する場合もあります。最近では、これらをさらに低侵襲化した、くびに切開を入れない術式もあります。
 両側の反回神経まひの場合、声帯が常に閉じた状態になり逆に呼吸困難や、息を吸うときも声が出るようになります。この場合、緊急気管切開の適応となります。そのうえで原因を検索します。治療は声帯に糸をかけて閉じた片方の声帯をひっぱってすきまをつくり、声も出て息もできる程度に調節し気管切開口を閉じます。
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