慢性声帯炎〔まんせいせいたいえん〕 家庭の医学

 声の濫用(らんよう)が続き声がかれた状態を放置していると、左右の声帯がはれてむくんだ状態になります(浮腫性声帯炎)。特に喫煙習慣のある女性では、女性ホルモンの減少により更年期以降声帯がはれてくることがあります(ポリープ様声帯)。また、甲状腺機能の低下で起こることもあります。ひどくなると左右の声帯がふくれて、かぜのたびに呼吸困難になる人がいます。激しく声を使う仕事や、スポーツの応援など、特に男性では声帯の使いすぎで粘膜が萎縮して、なめし皮のようになり声帯の振動が阻害され、声がかすれることもあります(声帯萎縮、瘢痕〈はんこん〉、声帯溝症)。

[治療]
 治療は「声の衛生」にもとづく生活習慣の改善が第一で、吸入療法、薬物療法で改善する場合もありますが、大きくなったポリープ様声帯は一般に手術になります。ポリープ様声帯の場合、呼吸困難が伴わなければ炎症をとってから手術で摘出します。声帯の萎縮や瘢痕の場合も同様ですが、この場合は声帯に自家組織の注入や移植、再生因子の注入による粘膜の再生などが試みられています。

●声の衛生
 のどの病気を予防するためにいちばん大切なことは、大声を張り上げる習慣をつけないような日ごろの「声の衛生」管理です。健康な生活を送るために肝心なことは「健康なからだ」と「声の衛生」です。からだの健康管理は家庭や学校でふだん十分注意していることと思います。そこで、もう一つの声の衛生を保つための注意事項を以下のようにまとめました。日常生活で活用してください

①叫んだり、金切り声をあげたり、大声で笑うことを避ける
―応援するときはみんなで声をそろえれば小さい声でもすむ
②裏声で話したり、無理な高さで発声したりすることをやめ、ささやき声も避ける
―自分にとってもっとも楽な大きさと高さの声で話す
③けむたいところやほこりっぽいところ、たばこを吸っている人のそばに行くのは避ける
―たばこの煙やほこりは声の敵
④せきばらい、からせきは必要最小限度にとどめる
―食事のときは少しずつ、むせないようにゆっくり食べる
⑤うるさい機械のそばや大きな音で音楽を聴いているときや、ドライヤーを使っているとき、バス、電車、地下鉄、飛行機、自動車の中など、うるさい乗り物の中での会話を避ける
―うるさい所ではおとなしくする。必要なことは相手の耳もとで話す
⑥話したくても思うように声の出にくいときは、無理に話さない
―楽に出せる声を使う。筆談も一つの方法
⑦話をするとき、くび、肩、胸、のどなどに力を入れない
―発声がいちばん楽なリラックスした姿勢で話す。呼吸法も大切
⑧冷たい空気や乾燥した空気の場所は避ける
―部屋の中はある程度の湿り気が必要、加湿を心掛けましょう
⑨屋外や広い部屋で遠くの人に対して話すのは避ける
―相手の近くへ行って話す
⑩かぜをひかないように注意し、かぜのときはできるだけ声を休ませる
―疲れたときやかぜのときはまずからだも声も休ませる

 以上の注意を守るのも大切ですが、その前に人が話しているときは、話している人の気持ちになって、静かに最後まで聞く姿勢を身につけましょう


(執筆・監修:独立行政法人 国立病院機構東京医療センター 臨床研究センター 人工臓器・機器開発研究部長 角田 晃一
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