脂肪性肝疾患〔しぼうせいかんしっかん〕 家庭の医学

 肥満、糖尿病、飲酒などによる脂肪性肝疾患は、飲酒量がエタノール換算で1日あたり男性は30g未満、女性は20g未満の場合は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、それぞれ60g以上と40g以上の場合はアルコール性肝障害と診断してきました。しかし、2023年6月に欧米の学会が中心となって、これらの病名と分類法を変更することを提唱し、同年9月に日本消化器病学会と日本肝臓学会もこれに同意しました。脂肪、アルコール性の英語であるfattyとalcoholicが「デブ、ふとっちょ」、「のんべい、アルコール依存」を意味することから、これら用語を用いないことにしたのが変更の理由です。両学会は2024年に日本語名を発表しました。
 新しい分類では、飲酒量を問わず、肝臓の合成能や解毒排泄能を担う細胞である肝細胞の中に中性脂肪がたまった状態を「脂肪性肝疾患(SLD)」と総称します。脂肪性肝疾患は飲酒量とともに、肥満、高血糖、高血圧、中性脂肪高値、善玉コレステロール(HDL)低値といった代謝機能障害に関する5項目のうち、少なくとも1項目を満たすかどうかで5つの病気に分類します。

●脂肪性肝疾患(SLD)の分類
 ① 代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)
 飲酒量がエタノール換算で男性は30g未満、女性は20g未満で、5項目の代謝機能異常のうち、少なくとも1項目があてはまる脂肪性肝疾患
 ② アルコール関連肝疾患(ALD)
 飲酒量がエタノール換算で男性60g以上、女性は50g以上の脂肪性肝疾患
 ③ 代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MetALD)
 飲酒量がエタノール換算で男性は30g以上60g未満、女性は20g以上50g未満で、5項目の代謝機能異常のうち、少なくとも1項目があてはまる脂肪性肝疾患
 ④ 成因不明脂肪性肝疾患
 ①、②、③のいずれにも該当しない脂肪性肝疾患
 ⑤ 特定成因脂肪性肝疾患
 ほかの病気に関連してみられる脂肪性肝疾患


 なお、新しい分類で用いられている代謝機能異常に関する5項目のうち、肥満の基準などは日本のメタボリック症候群の基準と異なっています。また、アルコール関連肝疾患と診断する際の女性の飲酒量の基準は、従来のアルコール性肝疾患の基準とは異なっています。現在は暫定的に、欧米の新たな基準に従って診断していますが、今後、日本の基準をどうするかは、日本消化器病学会と日本肝臓学会は検討中です(2025年5月現在)。