心房細動(AF)治療としてのカテーテルアブレーション(CA)は、技術的な進歩もあり、有効かつ安全な手技として広く利用されているが、血栓症リスクの高い患者に対しては、術後も経口抗凝固薬(OAC)の服用が推奨されている。一方、OACの継続には出血リスクが伴うため、継続と中止のバランスを見極めることが重要となる。名古屋大学循環器内科の岩脇友哉氏らは、同大学のCAデータベースをもとにOAC継続群と中止群の予後を後ろ向きに検討。「OACの中止がリスクとなる患者、あるいはベネフィットをもたらす患者像がサブグループ解析から明らかになった」とJAMA Netw Open2025; 8: e251320)に報告した。

CA後12カ月時点の服薬状況で継続群/中止群を分類

 岩脇氏らはCA後の血栓症リスクや出血リスクについては、個々の患者の特性や背景が関連するとの仮説を立て、今回の検討を行った。

 2006年1月~21年12月に同院で初めてCAを受け、術後12カ月間AFの再発や有害イベントがなかった患者を抽出。12カ月時点でOACを中止していた患者(中止群)と継続していた患者(継続群)に分類し、その後、両群の予後を2023年12月まで追跡した。基準点(12カ月時点)以降にOACの服用を再開あるいは中止した場合でも、中止群・継続群の分類は変えなかった。また、基準点以後の12カ月以内に追跡不能となった患者は解析対象から除外した。

無症候性AFではOAC継続、HAS-BLEDスコア2以上では中止が望ましい

 対象は1,821例(平均年齢63.6±11.7歳、男性1,339例)で、922例(50.6%)が継続群、899例(49.4%)が中止群だった。平均追跡期間4.8±4.0年中、血栓塞栓イベント43例(2.4%)、大出血イベントが41例(2.3%)、死亡が71例(3.9%)で発生した。

 逆確率重み付け(IPTW)に基づく調整を行った結果、100人・年当たりの血栓塞栓症発生率は、中止群(0.86、95%CI 0.45~1.35)が継続群(同0.37、0.22~0.54)に比べ有意に高かった(P=0.04)。一方、大出血イベント発生率は中止群(同0.10、0.02~0.19)の方が継続群(同0.65、0.43~0.90)に比べ有意に低かった(P<0.001)。

 サブグループ解析の結果、OACを中止して血栓塞栓症リスクが上昇するのは、無症候性AF、左室駆出率60%未満、左心房径45mm以上の患者、OACの中止が大出血リスク低下に寄与するのは、HAS-BLEDスコア2以上の患者であることが判明した。

 以上の結果は、傾向スコアマッチングによる解析でもほぼ変わらなかった。

個々の患者背景を考慮したリスク推計が求められる

 以上の結果を踏まえ、岩脇氏らは「CAが成功したAF患者において、術後OACの中止は血栓塞栓イベントの増加、あるいは出血イベントの減少と関連することが観察された。血栓塞栓症リスクと出血リスクは相矛盾するものであり、両リスクのバランスを考えたリスク推計には個々の患者背景を考慮した判断が求められる。OACの中止によりベネフィットが得られる患者の特性については、今後さらに、前向き試験で検討する必要がある」と結論している。

(医学ライター・木本 治)