医学トップの視座

ICTで地域に貢献
自ら学ぶ力を育てる―佐賀大学医学部

 佐賀大学医学部は1976年に設立された佐賀医科大学を前身とし、2003年10月に佐賀大学と統合、地域に密着した医療の担い手を育成してきた。古川哲二初代学長が掲げた自己学習、自己研さんの考えと、全人的な医療を目指す姿勢は現在にも受け継がれ、教育カリキュラム、教育方針に反映されている。第一期生である末岡榮三朗医学部長は「患者さんの病気をみるだけではなく、社会的背景、精神的背景も含めて総合的にみられる医師を育てたい」と話す。

インタビューに応える末岡榮三朗医学部長

 ◇実践で役立つ医師に

 新設医大として地域医療への貢献を最重要課題として取り組んできた佐賀大学医学部。「初代学長が目指したのは、患者さんの人生、生活、考え方も全部含めて診療する『赤ひげ』みたいな医師像です」と末岡医学部長は語る。

 医学部に入学して1~2年は基礎教育が中心となり、医療現場に触れる機会はないことが多い。最近では、多くの大学が早期臨床実習を導入しているが、佐賀大学医学部は開学当初から行っている。「できるだけ早い段階で医療の現場に触れることで、これから医療者になるのだという意識を高めさせるのが目的です」

 5~6年の臨床実習では、どんどんベッドサイドに送り込んで看護師や薬剤師と一緒にチームで患者さんに接する訓練を積ませる。「卒業生が臨床現場に来るとすぐに役立つという評価をいただくことが多いのは、設立当時の考えが連綿と受け継がれているためだと思います」

 ◇アメリカ式PBLを導入

 自己学習、自己研さんという基本的理念を達成するため、02年から医学部の教育にプロブレムベイスドラーニング(PBL)を導入した。自分で学び、それをグループの中で共有する学習方法だ。ハワイ大学のシステムを参考に、大学にあった形に改良を重ねている。

 例えば肺炎がテーマなら、患者さんの症状、診断のために必要な検査は何か、治療法をどうするのか、自分たちで学習し、グループで討論し、最終的には治療法を絞り込んでいく。

 「学生に任せきりでは方向性が違ってしまい、無意味な時間を過ごさせてしまう可能性がある。それを教員が方向修正しながら、有意義な勉強ができるよう導いていきます」。一方的な講義に比べると、なかなか手間のかかる教育方法だが、効果は大きいという。

 「PBLで考え方の基本をつくり、臨床実習で技術や技術の根底にある考え方を身に付けます。二つが一緒になって初めて社会に出て実践的な医師になるのです」

 ◇眼底画像をAIで解析

 眼底画像を人工知能(AI)で解析する取り組みが民間企業との共同研究で進行中だ。眼底画像からは、糖尿病、高血圧、緑内障、網膜色素変性症などの早期発見につながる重要な所見が得られる。しかし、「眼底画像は個人差が大きいので、解析には熟練した専門家の力が必要です。AIを活用することで、経験の少ない方でも読影できるようになると期待しています」。

 将来的には、このシステムを発展させて、血圧や食生活、運動習慣などの情報を組み合わせて、未病対策や医療費の削減につなげる構想もある。

 「眼底画像と生活習慣の情報をAIが判断して、『あなたが5年後に失明する可能性は何%』などと予測する。そうならないために、食生活を改善し、運動療法を行いましょう、と介入していくことができれば、効果的な疾病予防につながると思います」

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