特集

要件見直し、病院再編を
~新型コロナ受け入れ医療機関不足踏まえ~ 新しい病院制度の提案


 3 改正案─あるべき具体案

 (1)病院の要件を改める

 病院は病気を治す所のはずです。特に、感染症による肺炎の治療は病院にとり基本中の基本です。クラスター(感染者集団)の危険が生じるのは分かりますが、だからといって患者を自宅待機させ、死亡させていいわけではありません。感染症対策はこれまで特養でも必要とされてきており、例えばメシチリン耐性患者が出たときにはこれまでも特養内で隔離が行われてきました。

 そこで、まず病院は、現在の分類の高度急性期および急性期病床だけとします。そして感染症治療のできる内科と外科の設置を義務付けます。これにより、担当医師がいないので受け入れられないという事態を防げるでしょう。結核だけ、眼科だけなどの単科病院は、都道府県知事の個別の許可で例外的に認めることとします。

 次に病院の構造設備を拡充すべきです。例えば人工呼吸器を必置とし、十分な動線を確保できる面積を有する所を病院として分類、許可すべきでしょう。今回のように感染爆発が起きたら、新型コロナ病床を病院内で十分増やせるように、余力を持たせた構造設備基準とすべきです。これらに対応できない所は回復期施設とし、病院とは認めないこととすべきでしょう。

 (2)病院の再編

 医師・看護師の医療職員を病院に集中しなければ、いくら臨時の病床数を増やしても対応できないことを前提に再編論を述べます。緊急時に行政が命令できるようにすれば動くという意見がありますが、その時同時に通常診療や業務を全部中止しろということができれば別ですが、それができないとすれば、必要な数の医療職員がいないのに動員命令をかけても病院は動きません。

 まず、急性期病床として届けられていても、治療実績のないものや新しい病院要件を満たさない所は廃止します。

 病院は、少なくとも医師が3人在籍し、夜間宿直もあり夜間の容態急変にも対応できるので、診療報酬上も優遇されていると考えられますが、回復期病床および慢性期病床はこうした対応を取る必要は少ないとみられます。従って、これらの病床は病院でなく回復期施設として、医師1人を必置とし、医療保険で支払う施設とすべきです。

 ただし、回復期病床の一部は、急性期リハビリを行うために病院として残すことが考えられます。米国の長期ケア病院(Long-term care hospitals)は、臨床的に複合的な問題があり、平均で25日以上急性症状または慢性症状のある患者に、例えば人工呼吸器による医療を提供するとされています⑷。

 一方、別の見方から、脳卒中患者で退院する者の1割程度の回復期病床が必要と考えられます。とすれば、先の米国の考え方も含め、回復期病床は17年の脳卒中患者数の10分の1の11万床程度が必要で、これは病院として残すことになります。

 (3)回復期施設の設置

 11万床以外の回復期病床5万床と慢性期病床33万床は、急性期病床から在宅療養への橋渡しの中間施設の役割を果たすのですから、これらを回復期施設とします。

 また、他の一般病床のうち、新たな病院の要件を満たさないものも、中間施設としての回復期施設として許可し、医療保険から支払うこととします。ただし、その医師要件は施設長である医師1人で可とし、看護師の配置も緩くして、多くの医療職員は不要とするものです。その役割は、急性期病床から在宅への復帰で慢性期リハビリを中心に行う施設とします。

(表2) 急性期に回せる数 (人)

(表2) 急性期に回せる数 (人)

 (4)介護医療院の廃止と特養との一体化

 介護医療院は老健施設に一本化し、老健施設は生活施設であり医師による管理もある施設として、介護保険で支払うこととします。医師の配置は介護老人福祉施設と同じく非常勤で可とします。

 まとめると、回復期病床および慢性期病床については医師と看護師の配置基準を大幅に緩め、介護医療院や老健施設については、医師の常勤基準をなくし、看護師の配置基準を大幅に緩めて介護老人福祉施設と同様とし、これらにより余剰となった職員を新たな定義の病院に集中させます。これにより、感染症等緊急時に対応できる病床数を増やせます。そして、医師の労働時間特例もやめさせることができます。

 仮に回復期病床5万床、慢性期病床33万床を老人保健施設並みの1施設1人の医師数にすると、6000人の医師のうち3000人ほどを急性期病院に回せる計算になります(表2)。ただ、医師の年齢が高いと実際どこまで急性期医療を担当できるかの問題は残ります。看護師は約1万人で足りるので、9万9000人との差である約8万9000人を急性期病院に回せます。

 また、老健施設、介護療養病床および介護医療院の医師数を現在の特養並みの非常勤にすると、約1000人で足りますので、約6000人を急性期病院に回せますし、看護師数を現在の特養並みにすると、約2万2000人で足りますので、5万7000人との差である3万5000人を急性期病院に回せることになります。

 この制度改革で、表2の通り医師9000人、看護師12万4000人を急性期病院に回すことができ、新型コロナのような新たな感染症に対応することができると考えます。

 (5)新型コロナ患者の容態の急変に備える在宅医療の充実

 いざというときの不安への対応のため、都道府県または市町村が在宅医療充実の努力をする必要があります。例えば、在宅療養支援診療所・支援病院、訪問看護ステーションなどが、常に患者と連絡を取れる体制づくりが必要になると考えます。


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