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リウマチと発熱 【第8回】

 ◇症状を観察し、病気を疑う必要

 リウマチ性多発筋痛症は、症状を観察し、そのパターンを理解することで早期に疑うことが大切です。以下に、典型的な症状をリストアップしました。

 ・肩や首の痛み 特に朝起きたときに強く感じることが多いです。

 ・腰の痛み 同様に朝のこわばりが特徴的です。

 ・微熱 持続的な微熱が見られます。

 ・疲労感 全身の倦怠(けんたい)感が続くことがあります。

 ・体重減少 食欲不振に伴い体重が減少することがあります。

 ・関節のこわばり 動きだしに時間がかかることが多いです。

 肩や首、腰の痛みやこわばり、微熱、疲労感、体重減少などの症状が数週間以上続く場合、この疾患の可能性があります。特に朝に症状が強く表れることが多いです。

 症状が風邪やインフルエンザと似ているため、自己診断に頼らず、早期に医師の診察を受けることが重要です。迅速な診断と適切な治療により、生活の質を維持することができます。

 リウマチは関節の症状だけでなく、さまざまな合併症を引き起こすことがあります。特に長期間の薬物療法が必要なため、これに伴う副作用や合併症に注意することが重要です。

 ◇免疫低下で38度以上の高熱も

 リウマチ治療に使用される薬剤、特に抗リウマチ薬や生物学的製剤は免疫系の働きを抑えることで効果を発揮します。

 しかし、これにより免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなるリスクがあります。免疫力が低下すると、風邪やインフルエンザなどの一般的な感染症に対しても抵抗力が弱くなり、38度以上の高熱が出ることもあるのです。

 特に免疫抑制剤を使用している場合は、感染症の予防が重要です。手洗いやうがいの徹底、適切な予防接種を受けることが推奨されます。

 ◇風邪と症状が似ている肺炎に要注意

 リウマチの患者は、風邪の症状が進行して肺炎を引き起こすリスクが高まります。肺炎は特に高齢者にとって重篤な病気であり、治るのに時間がかかり、場合によっては命に関わることもあります。

 風邪の症状が長引き、せきやたんがひどくなったり、息切れが続いたりする場合は、早めに医師の診察を受けることが重要です。

 また、肺炎予防のためのワクチン接種も検討するとよいでしょう。リウマチ患者は特に注意が必要です。

 ◇手洗いとうがいを徹底し、感染症予防を

 リウマチの治療は長期間にわたり、その過程で発熱や合併症のリスクが伴います。日常生活において、手洗いやうがいの徹底など基本的な感染症予防策を講じることが重要です。

 また、定期的な健康チェックと医師とのコミュニケーションを大切にし、適切な治療を継続することがリウマチと上手に付き合うための鍵となります。発熱や他の症状が続く場合は早めに医師に相談し、安心して治療を受けることができる環境を整えましょう。(了)

湯川宗之助医師

湯川宗之助医師

 湯川宗之介(ゆかわ・そうのすけ) 75年生まれ、東京都出身。00年東京医科大学医学部医学科卒業後、同大学病院第三内科、産業医科大学医学部第一内科学講座を経て、15年に湯川リウマチ内科クリニックを開院。16年一般社団法人リウマチ医療・地域ネットワーク協会を設立。リウマチの正しい理解を促す啓蒙活動を精力的に行う。関節リウマチの啓発活動、継続的なその取り組みが評価され、さまざまなメディアでも紹介。20年にはKADOKAWA出版より書籍を発刊。

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