林基弘 医師 (はやしもとひろ)

東京女子医科大学病院

東京都新宿区河田町8-1

  • 脳神経外科
  • 講師(先端生命医科学研究所先端光学外科学分野兼任)

脳神経外科 外科

専門

定位的放射線治療(ガンマナイフ)

林基弘

1994年よりガンマナイフ治療に従事。総計8,800症例におよぶ経験と技術力を持ち、同治療法の普及に力を注いできた。特に「三叉神経痛」に対しては造詣が深く、薬物療法も含め独自の診療より患者個々の状況に合わせて1,000人以上の診療を担当した。 学術的には、2015年に第12回国際定位放射線治療学会学術大会長を務め、脳腫瘍・脳動静脈奇形などの神経解剖学に準拠した精密な治療に対して世界的評価を受けている。一方で「外来はこころの手術場である」を信条に外来診療にあたり「最先端の切らないメス」で患者の人生を手術する国内で希少な名医を超えた良医である。

診療内容

三叉神経痛治療としては、薬物治療、神経ブロック、外科手術、ガンマナイフ治療がある。
三叉神経痛はいわゆる「疼痛」ではなく「発作」の疾患カテゴリーに属すると考え、まずは抗てんかん薬(テグレトール)投与を優先している。その際は起床時と就寝前、1日2度服用することを指示している(発作時と定期的な食後服用では、血中濃度と作用の観点で効果が極めて薄くなる)。起床時に服用してから1時間半は、顔や口内への刺激(食事・歯磨き・洗顔・ひげそり・化粧など)は一切避けること。服用後4日から1週間で、ほとんどの症例で著明な改善を認める。数年以上薬物療法のみでコントロールできている症例が、実に全体の70%を占めている。これにより、まずはいったん“こころのリセット”を図ることができる。
外科手術は全身麻酔下で行う。開頭し、三叉神経を圧迫している血管(主に上小脳動脈)を神経から離して、再び神経を圧迫しない場所に固定するというもの。血管圧迫による三叉神経痛の場合、この手術による成功率は90%以上と高く、即効性であり薬物投与も不要となる。しかも、大きな合併症が少ない安全な手術ではあるといえる。しかし、年齢や全身状況などによっては合併症などのリスクも生じるため、きちんと説明を受けてから手術に臨むことを勧める。
三叉神経痛が高齢者に多くて全身麻酔自体がリスクとなる患者が多いこと、開頭手術に恐怖を抱く患者も少ないことから、「最後の砦」として勧めるのが、ガンマナイフ治療。治療奏効率は95%を超え、激痛から逃れられる患者は非常に多く、適格症例であれば福音的な治療であり、2015年より薬剤抵抗性三叉神経痛に限り保険適応となった。しかし一方で、「効果発現までに多少時間(1~3ヵ月)がかかる」「約半数に持続的な顔面しびれなどの副作用が出る」などが、最初から積極的に勧められない理由と考えている。
ガンマナイフ治療とは三叉神経そのものに0.1ミリの精度を持って放射線を集中照射することで、外科治療同等以上の効果と、より少ない副作用によって治療効果を得るもの。局所麻酔下治療であるために、ほとんどの症例が日帰り治療となっている。なお、2度にわたる治療は神経損傷を引き起こす可能性が高いため、人生で1回のみの治療と考えるのが妥当(初回治療より10年以上経過した高齢者は再治療考慮可能)。そのために、いつ・どこで・誰にガンマナイフ治療を行ってもらうかが重要となる。ちなみに、三叉神経領域に帯状疱疹を来すと、疱疹のみられる期間だけでなく、疱疹が消失した後にも激しい神経痛(三叉神経障害性疼痛)を生じることがある。疱疹消失1ヶ月以上たってから痛みを起こすものであり、上記三叉神経痛と間違えられやすい。現状で有効な治療法はないが、個々で専門医にアドバイスを受けることによって改善は期待できる。
三叉神経に絡む顔面の激痛(三叉神経障害性疼痛も含む)は、肉体的な辛さだけでなく、精神的にも病むことが多くメンタルケアも欠かせない。全人的ケアのもとで、個別対応による治療理解と診療指針の確定が必要となる非常にデリケートな疾患と捉えている。まずは、専門医を訪ね、セカンドオピニオンなどでしっかりと時間をかけて診療を受けることが、痛みのない自分を取り戻すための一番の近道と考えている。

医師プロフィール

1991年 群馬大学医学部卒業、東京女子医科大学病院脳神経外科入局
1994年 東京女子医科大学病院脳神経外科ガンマナイフユニットへ従事
1999年 フランス・マルセイユ・ティモンヌ大学留学
2002年 東京女子医科大学病院先端生命医科学研究所兼任助手
2007年 東京女子医科大学病院脳神経外科・講師
2010年 世界脳神経外科連合(WFNS)・定位放射線治療部門副会長就任
2012年 東京女子医科大学病院 ガンマナイフ室長
2014年 群馬大学放射線腫瘍科・重粒子線医学センター非常勤講師
2015年 第12回 国際定位放射線治療学会学術大会長