田草川豊 医師 (たくさがわゆたか)

総合病院 厚生中央病院

東京都目黒区三田1-11-7

  • 脳神経外科
  • 部長

脳神経外科 外科

専門

三叉神経痛、顔面痙攣、舌咽神経痛、脳腫瘍

田草川豊

田草川豊医師は、三叉神経痛、顔面痙攣、舌咽神経痛に対する手術(神経血管減圧術)のエキスパートとして知られる。顔面痙攣へのボツリヌス毒素療法にも精通し、日本神経治療学会のガイドライン(標準的神経治療:片側顔面けいれん)でも手術療法に関して執筆を担当している。学会発表に加えて患者会で講演を行う機会も多く「医師は各治療法のメリット・デメリットなどの詳細情報を提供する立場で、治療を選ぶのは患者自身である」との考えで患者本位の医療をめざしている。

診療内容

片側顔面痙攣は顔面筋が発作性・反復性かつ不随意に収縮する、つまり本人の意思と関係なくピクピク不自然に痙攣する病気である。顔面神経が動脈に圧迫されるために生じると言われる。治療としてボツリヌス毒素療法(製剤を注射し筋肉の緊張を除く)、外科的治療法(神経血管減圧術)が知られるが「ボツリヌスは毒素だから副作用が心配」「開頭手術はこわい」など、患者にとってはいずれにせよ不安材料が多く、どちらが適切か治療選択にも悩むところだろう。
片側顔面痙攣に詳しい田草川医師は治療法についてこう語る。「手術とボツリヌス治療はどちらも効果の高い治療ですが、どちらか一方のみを選ばなければならないという二者択一のものではありません。選択肢が2つに増えるからこそ守備範囲も広くなると考えてください。ただし、いずれもメリット・デメリットがあります。担当医からきちんと納得いくまで説明を受け、本人の希望に合う治療を選択することが必要です」
もちろん発病後すぐにボツリヌス療法や手術が適応となる訳ではない。発病してからの期間が短く軽症である場合は原則として内服治療はせず、経過観察を行い、症状が目立ってきたらボツリヌス治療が勧められる。重篤な合併疾患(悪性腫瘍、虚血性心疾患、高度の呼吸障害、未治療の糖尿病、肝障害など)がある場合や、本人が手術を拒否する、痙攣のない側に難聴がある、などの場合もボツリヌス治療が優先される。また、ボツリヌス毒素療法が定着した現在は絶対的に手術が適応されるケースは少ないが、発症から数年たって症状が目立ち始めた、完治を希望する、ボツリヌス毒素療法に満足していない、高齢に至っていないなどの場合は手術となる可能性が高い。開頭手術というと大がかりなものを想像しがちだが、そうしたものと比較すると片側顔面痙攣の手術療法「神経血管減圧術」のリスクは低いという。「開頭手術といっても、神経血管減圧術はコイン程度の大きさの範囲で行います。この手術によって痙攣がなくなる確率が高く、術後に再発する可能性も低いと言えます」(田草川医師)
比較的安全であるとはいえ、全身麻酔下での開頭手術にはそれなりのリスクが伴うため、患者本人や家族に与える精神的影響に配慮しなければならない。「きちんと患者・家族とのコミュニケーションの場を設け、希望や年齢、合併症等を考慮して治療を進める必要があります。その人に合った選択をすることが大切です。たとえば高齢の場合は手術を選択しないことが大半ですが、患者が健康で、手術にも積極的であるとき、さらに家族の理解が得られる場合は患者自身の希望を優先するのが私の方針です」と田草川医師は話す。
それでは神経血管減圧術を行えばすぐに痙攣が消えるのか?と過大な期待を抱きかねないが、痙攣が消えるまでに数ヶ月から半年、なかには数年かかることもある。あらかじめタイムラグについて説明しておき、長く待てないという人や、ごく稀ではあるが再発した場合にはボツリヌス治療が第一選択となるという。
顔面痙攣のほか、田草川医師は三叉神経痛の治療においても実績が豊富である。三叉神経痛は顔面痙攣と同じく神経血管圧迫症候群と呼ばれる疾患の一つで、強烈な激痛に襲われるものだ。根治をめざすなら神経血管減圧術による手術療法しかないとされる。神経血管減圧術は非常に狭い空間内で実施する高度な手術であるが、同医師は年間200例もの飛び抜けた熟練の技を持つというから安心だ。
田草川医師は、治療に携わるにあたって医師に求められる姿勢について次のように語る。「現在、顔面痙攣の治療法の主流はボツリヌス毒素療法と神経血管減圧術です。時折、一方の治療だけに偏った考えを持つ医師を見ることがありますが、そうした医師がもう一方の治療法について専門知識を備えていることは少ないように感じます。そうなると当然ながら、セカンドオピニオンを得る機会を患者に提供する姿勢も不足してきます。治療法の最終決定を行うのは患者自身であって、医師には両方の治療法についての客観的な情報提供が求められます。こうした姿勢は医師の責務の一端であると考えています」

医師プロフィール

1976年 東京大学医学部医学科 卒業
1991年 三井記念病院脳神経外科部長
2012年 東京医科大学脳神経外科臨床講師
2015年 総合病院厚生中央病院 脳神経外科部長

「片側顔面痙攣・三叉神経痛」を専門とする医師