平田和彦 医師 (ひらたかずひこ)

福岡大学筑紫病院

福岡県筑紫野市俗明院1-1-1

  • 麻酔科
  • 診療科長、医局長

麻酔科 緩和ケア

専門

急性帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛,神経障害痛

平田和彦

平田和彦医師は三叉神経痛や急性帯状疱疹痛など痛みに関する数々の臨床や研究を行うほか、論文を執筆。急性痛と異なり、慢性痛を消失させることは困難。今ある痛みをできるだけ少なくして日常生活に影響しないレベルで維持することを目標とし、気長に治療を続けている。一般に慢性痛の治療では、薬物治療、神経ブロック療法(局所麻酔薬や神経破壊薬を用いる)、リハビリテーション、精神・心理学的療法、などの集学的な治療を行うことが必要だという。各種皮膚感覚テストやサーモグラフィーによる検査も行っている。

診療内容

一般に慢性痛の治療では、薬物治療、神経ブロック療法(局所麻酔薬や神経破壊薬を用いる)、リハビリテーション、精神・心理学的療法、などの集学的な治療が必要であることが少なくない。各種皮膚感覚テストやサーモグラフィーによる検査も行っている。
三叉神経痛の原因は、血管による圧迫が最も多い。しかし、まれに脳腫瘍のことがあるので、MRIによる画像診断が必要である。もし腫瘍が原因であれば、すぐに脳神経外科の受診が必要となる。三叉神経痛の治療の基本は、第一選択は薬物治療で、カルバマゼピンの内服を行う。副作用で内服が困難な場合や、充分な効果が得られない場合に、他の治療方法を選択する。その他の治療には、手術治療、ガンマナイフ治療(他院を紹介)、神経ブロック治療がある。このなかで原因を取り除く治療(根本的治療)は開頭下の神経血管減圧術があり、脳神経外科で行っている。比較的安全な手術であり、治癒率が高い。その他のガンマナイフや神経ブロック治療は、対症療法である。
ガンマナイフは、三叉神経に放射線をピンポイントで照射する方法。神経ブロックよりも、感覚低下の合併症が少ないのが利点である。しかし、保険診療対象外(2012年7月現在)である。
神経ブロックとは、薬剤や熱によって感覚神経を遮断する方法である。末梢の感覚線維の神経伝導をブロックし、トリガーポイントからの刺激を減少させることで三叉神経痛を軽減させる。神経ブロックは局所麻酔薬による神経ブロックと、神経破壊薬や高周波熱凝固による神経破壊的神経ブロックに分けられる。局所麻酔薬による神経ブロックは可逆的であり、神経破壊薬や高周波熱凝固によるブロックは1年以上効果が持続する。以下に説明する。まず、局所麻酔薬による神経ブロックについて。作用時間は麻酔薬の種類によって異なり、通常は数時間である。しかし、局所麻酔薬の効果が消失した後も痛みが長く軽減することもある。この方法は経破壊薬を用いた神経ブロックより合併症が少ないので、まず試みるべき方法であると思われる。次に、神経破壊的な神経ブロックについて。この方法には神経破壊薬(エタノール,高濃度局所麻酔薬)を用いる方法と、高周波熱凝固法がある。神経破壊的な手技を行う前には必ず局所麻酔薬(効果が数時間)を投与し「当該神経支配領域の感覚低下が得られ」「痛みが軽減していること」「合併症がないこと」を確認する。神経ブロックによる感覚低下は患者には苦痛となるので、局所麻酔薬による感覚低下を患者に実感させ、同様の感覚低下が永く持続することへの了承を得た後に、神経破壊薬の投与や高周波熱凝固を行う。穿刺針が神経に接触した際には強い電撃痛が生じることが多いので、ベンゾジアゼピン系鎮静薬、オピオイド系鎮痛薬を静脈内に投与し、鎮静下に行うことが多い。適度の鎮静状態では、局所麻酔薬を投与した後の感覚低下の問診を行うことは可能である。
高周波熱凝固法では専用の穿刺針を用い、目的とする神経に先端を接触させる。穿刺針の先端に70~90℃の熱を発生させることで、神経の蛋白質を凝固する。エタノールによるブロックと同等の効果が期待できる。しかし、高周波熱凝固法では効果が穿刺針先端周囲に限局するので、神経破壊薬を用いた神経ブロックよりも安全である。三叉神経ブロックは1種類ではなく、外来で行うことができる神経ブロックもあれば、X線透視室でX線を見ながら行う神経ブロックもある。同科では、X線透視を用いて行う神経ブロックは入院して行っている。この神経破壊的な神経ブロックによって痛みが軽減している期間は、半年~数年である。痛みの軽減と同時に、感覚低下が発現する。感覚低下が改善してくると痛みが再燃することが多いので、再度神経ブロックを行うことが多い。
神経破壊薬(アルコールなど)は組織障害性が強く、注入した薬液が注入部位の周囲に流出し、目的としない神経に作用して運動麻痺などの合併症をきたすことがある。高周波熱凝固法の方が安全なので、近年、神経破壊薬による三叉神経ブロックは行っていない。
今回は三叉神経痛の神経ブロック治療について述べたが、治療のなかで神経ブロックが最適ということはなく、治療法の選択肢のひとつである。神経破壊的ブロック後に長期間持続する感覚低下は必発であり、患者にとってはとても不快な感覚である。それぞれの分野で年々治療法が進歩しており、また一長一短があるので、ひとつの方法にこだわらず、個々の患者に最適な治療法を選択することが肝要である。

医師プロフィール

1989年 福岡大学医学部 卒業
1991年 滋賀医科大学麻酔科勤務、第一生理学教室で学位取得
2012年 福岡大学病院麻酔科病棟医長、外来医長、医学科講師
2016年 福岡大学筑紫病院 麻酔科診療科長、医局長

「片側顔面痙攣・三叉神経痛」を専門とする医師